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【評価・感想】『スプリンターセル 二重スパイ(上海版)』レビュー

3.5
ゲームレビュー
ゲームレビュー
この記事は約6分で読めます。
原題Tom Clancy’s Splinter Cell Double Agent
対応機種PC,Xbox(互換)
プレイ時間11時間~
ストーリー愛娘を亡くし、自暴自棄になったサム・フィッシャーは、テロ集団”JBA”に潜入する危険な任務に参加する。善悪の境界線が曖昧な世界で、サムはNSAのスパイとして、JBAのメンバーとして難しい任務を遂行していく。

今作は「スプリンターセル」シリーズの五作目にあたり、シリーズで初めてHDゲーム機向けに発売された作品。なお、同じタイトルで、Xbox(モントリオール版)向けにも発売されており、そちらはゲームシステムやミッションなどがまったく異なるものになっている。

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著者情報
Kakihey

2014年末より当サイト「Kakihey.com」を運営中しています。現在までに300本以上のゲームレビューを公開しています。基本的にPCでゲームを遊んでいます。

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評価

Xbox 360版をXbox Series Sでプレイ。多数報告されているバグに関しては、今回のプレイでは「本来なら倒されるべき敵が棒立ちしたまま」「最終ステージで暗視ゴーグルに視覚的なバグが発生する」の二つだけで、特に問題なく遊べた。フレームレートの落ち込みもなし。

新しいステルスプレイは”ベテラン”向け…?

今作では、”このシリーズにおける”ステルスプレイの大胆な見直しが行われた。

まず、ほとんどのエリアから”暗闇”が取り除かれた。

これまでは”暗闇”が安全地帯として存在し、その中にいる限りは簡単にステルス状態を維持できたが、今作では「暗闇を見つけることが難しい」と感じるほど、明るい場所が増えており、従来のステルスプレイが通用しにくくなった。

“暗闇”という最強の武器を失った今作では、ステルスプレイは”遮蔽物に身を隠し、敵の視線に注意しながら進んでいく”ものになり、過去作のように”暗闇に潜んでいれば無敵”ではなくなった。

加えて、周囲の明るさを段階的に視覚化するメーターは、「緑色(暗い)」と「黄色(明るい)」の二色のランプに置き換えられ、主人公が発する音と周囲の音を視覚化するメーターに至っては、跡形もなく消えたというように、ステルスプレイをサポートする部分にもメスが入った。

ミニマップに敵の位置が表示されるが、あくまでも参考程度
  • ほとんどのエリアから”暗闇”が消えた
  • 万能メーターが万能ではなくなった

当然、それらがすべて揃っていた過去作と比べると、今作は難しく感じる。

“暗闇”が少ないので、敵に察知されやすくなり、音を視覚化するメーターが無くなったので、主人公が発する音の大きさが把握しづらくなったなど、過去作と同じ感覚で遊んでいると、次の瞬間には蜂の巣にされてしまうくらい、ステルスプレイは変化した。

そんな今作の作風は、「スプリンターセル」の特徴を自ら捨てるもので、このシリーズと他のステルスゲームとの違いを曖昧にするものと言える。

ただ、「スプリンターセル」の特徴が薄れてしまった一方で、暗闇や万能メーターなどに頼らない原始的なステルスプレイの存在感が増している面があり、少なくとも、従来のステルスプレイに慣れ切ってしまっていた私にとっては、このシビアさが良さにも感じられた。

明るい場所が多いので、これまで以上にエリアの構造や敵の動きなどを意識しないといけず、万能メーターが万能ではなくなったことで、より慎重に隠密行動しないといけなくもなり、過去作とはまた違った緊張感が漂っているのだ。

後で述べるように、粗粗しい部分も少なくないが、今作のステルスプレイは、「遮蔽物に身を隠す」「敵の視線に注意を払う」と言った基本をより意識させるもので、その挑戦的な難易度は、これまでとは違うシビアさがあり、面白く感じた。

“二重スパイ”という設定

今作のサム・フィッシャーは、”JBA”を名乗るテロ集団に潜入するスパイだが、それはストーリーだけではなく、ゲームシステムにも組み込まれた要素になっている。

今作では、プレイ中に下す決断や活動内容によって”NSA”や”JBA”との信頼関係が変化する仕組みが導入されており、プレイヤーはサム・フィッシャーとして、難しい立場に追いやられることになる。

  • プレイ内容により、NSAやJBAとの信頼関係が変化する
    =>信頼度が0になるとゲームオーバー
  • NSAかJBAかの間で危険な綱渡りをする

というのは建前で、実際は”二重スパイ”という設定はほとんど意味がない。

私の場合、常にNSA寄りの選択を繰り返したが、クリアした時点ではJBAとの関係も良好だった。信頼度が0になったのも、後で述べるJBA本部でのスパイ活動がバレた時くらいで、それ以外で信頼度を意識することはほとんど・・・・なかった。

よって、”二重スパイ”という設定にあまり期待しない方が良いのだが、一方で”NSAのスパイとしてJBAに潜り込む”というコンセプトは面白く、その”スリル”は確かに味わえる。

今作では、メインミッションの合間合間に”JBA本部”での活動が用意されている。

“JBA本部”はオープンなエリアになっており、他のメンバーたちが忙しなく動き回っている中で、彼らの目を盗んでスパイ活動に励むのだが、リーダーの寝室に忍び込んで個人情報を収集したり、あちこちでメンバーの指紋を採取したりするのは、何とも言えない背徳感があり、潜入捜査ならではの葛藤やスリルがあった。

“ゲームシステムとしての二重スパイ”はほぼ機能していないが、こうした”二重スパイとして活動する”部分は非常に面白い体験を生んでおり、ここは今作ならではの面白さと言える。

説明不足で、調整が甘い

この位置で、左奥の敵に察知される

正直、不満点は挙げだすとキリがない。

  • 敵の視線が鋭く、かつ一貫性がない
  • 明るい場所と暗い場所が分かりにくい
  • 過去作と比べて、全体的にレスポンスが悪い
  • JBA本部での”発見=>失敗 or やり直し”は面倒くさい
  • JBA本部で、毎回設けられている時間制限(約30分)の必要性

など、過去作と比べると作り込みが甘く、遊んでいると、小さなストレスが蓄積されていく。

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総評

このシリーズでは珍しく、前作に劣っていると感じた。

上海のホテルを始めとした一部のミッションや、堅実なゲームプレイなど、「スプリンターセル」らしい奥深さを感じさせる部分もあるが、それ以上に、不完全なゲームシステムや作り込みの甘さが目に付く内容で、このシリーズに求められる水準には達していないと感じた。

同じ「二重スパイ」であれば、もう一つのバージョンであるXbox版の方が何倍も面白い。

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初版: 2016年3月16日

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