原題 | Grand Theft Auto V |
対応機種 | PC,PlayStation,Xbox |
プレイ時間 | 31時間~ |
ストーリー | プレイヤーは引退した元犯罪者のマイケル、野心的な青年のフランクリン、破滅的な犯罪者のトレバーとして、ロスサントスとその近郊で、数々の悪事に手を染めていく。 |
今作は、シリーズの15作目にあたる「グランド・セフト・オート」。
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評価
GTA、Rockstar Gamesの集大成
今作は、シリーズの枠を飛び越えて、それまでに「Rockstar Games」が手掛けてきた作品の集大成。
「Rockstar Games」は、『グランド・セフト・オート4』から今作までの間に、10作近くも作品を世に送り出して来たが、その一つ一つが今作の各要素に取り入れられ、強固なゲームプレイを下支えしている。
オープンワールドのデザインは「グランド・セフト・オート」だけれど、ゲームシステムや多様性に満ちたゲーム世界は『レッド・デッド・リデンプション』で、シューティングの操作性や感触は『マックス・ペイン3』。レースゲーム風の挙動やシステムも、”ライトな”『ミッドナイトクラブ ロサンゼルス』と言えるものになっている。
- 今作では、武器ホイールや改善されたカバーシステムなどのおかげで、銃撃戦はスムーズに展開され、ドライビングも、アナログスティックによる直感的な操作が可能になった。そして、オープンワールドも、野生動物が生息していたり、ランダムイベントが発生したりなどし、これまで以上に生きた世界になっている。
これまでの「グランド・セフト・オート」も、様々なジャンルを取り入れたゲームだったが、今作では、各ジャンルに特化した作品からゲームシステムなどを取り入れているようで、それらが一本のゲームに統合された今作は、やはり過去作や他のオープンワールドゲームと比べると、完成度の高さは際立っていると感じる。
グランド・セフト・オートとしては
次に「グランド・セフト・オート」としては、『グランド・セフト・オート サンアンドレアス』の流れを汲む内容になっている。
『グランド・セフト・オートIV』 は、ゲーム機の世代交代により実現した高い表現力を武器に、大都市に巣食う犯罪者たちの姿を生々しくストーリーと、現実世界をシュミレートしたようなゲーム世界を作り上げ、シリーズを次の段階へと押し上げた。
しかし、同時にそれまでの進化を捨ててもいて、「GTA4」では、不動産投資や教習所、服装を除く外見のカスタマイズなどが出来なくなってしまった。「グランド・セフト・オート」としては、2001年に発売された『グランド・セフト・オート3』の頃に逆戻りしていた。
その点、今作は「GTASA」までの進化をしっかり取り入れている。
比較的”ありえそうなもの”ばかりだったミッションは、演出に長けたドラマチックなものが中心になり、陸海空を舞台に、傑作「GTASA」に匹敵するミッションが用意されている。さらに、どのミッションもシチュエーションは様々で、そのミッション限定のエリアもたくさん用意されており、非常に手が込んでいる。
また、今作は寄り道要素も充実。
お馴染みだった不動産投資やゲーム世界と連動する株取引など、これまでにもあったものからなかったものまで、とにかく様々なコンテンツが大量に用意されている。
そうした今作は、旧シリーズ(GTASA以前)からの順当なアップグレード版になっており、「グランド・セフト・オート」としては、「GTA4」以上に”このシリーズらしさ”を感じさせる内容になっている。
どちらかと言うと、「GTA4」の後継作としては『レッド・デッド・リデンプション2』の方が近いと思う。
特に面白い2つの要素
一つ目の特徴は、やはり主人公が三人もいること。
「IV」では、『グランド・セフト・オートIV』のニコ・ベリック、『グランド・セフト・オートIV ザ・ロスト・アンド・ダムド』のジョニー・クレビッツ、『グランド・セフト・オート ザ・バラッド・オブ・ゲイ・トニー』のルイス・ロペスというように、三作品それぞれに主人公がいたが、今作では一つの作品に集約された。
今作の主人公であるマイケル、フランクリン、トレバーの三人は、「キャラクターホイール(Character Wheel)」を介して管理され、基本的にミッション中以外は自由に切り替えることができる。
今作の三人も住む世界やバックグラウンドなどは異なり、それに合わせる形で、各キャラクターごとに専用のサイドミッションやアクティビティなどが用意されており、プレイヤーはそれぞれのキャラクターでそれぞれの生活を楽しむことができる(※100%クリアした際のデータを見ると、一人あたり20時間弱遊んでいた)。
ただ、三人のキャラクターがもっとも活きるのはメインミッションだろう。
今作のメインミッションでは、キャラクターを切り替えることで、長々とした移動シーンをカットしたり、銃撃戦からヘリ同士のチェイスシーンへと移行したりなどし、プレイヤーが常にアクションシーンのど真ん中にいられるようにしている。
三人それぞれに担当が振り分けられる共同作戦では、プレイヤーは彼らに切り替えることで、「ヘリの操縦」から「スナイパーライフルでの援護射撃」までを同時並行的に行うことができる。
これまでと比べると、今作はミッションの進行に無駄がなく、かつアクションの密度も高い。
二つ目の特徴は、”強盗”ミッション。
「グランド・セフト・オート」では、”犯罪モノ”という性質上、強盗ミッションがほぼ毎回登場するが、今作では、いちミッションではなく、節目節目に登場するコア要素としてメインミッションに組み込まれている。
今作の”強盗”は、『グランド・セフト・オート サンアンドレアス』の”カジノ強盗”をベースにしているようで、プレイヤーは下準備の段階から計画に関与することになる。逃走用の車両はもちろん用意しないといけないし、特殊部隊の装備が必要だったら、街を巡回している警察車両を奪わないといけない。
そんな今作の”強盗”は、それ自体が大掛かりで面白いのだが、私は“自分で決められる”ことが何よりも面白いと感じた。
基本的に、メインミッションは進行がガチガチに固定されているが、こと強盗に関しては「どのような方法で押し入るか」「どのメンバーを作戦に加えるか」はプレイヤー自身が選択できる。さらに、強盗に用いる乗り物や装備を揃える準備ミッションでは、”目標だけが指定され、あとは自由に攻略する”というスタイルが取られており、『グランド・セフト・オート3』を想起させるオープンなミッションのデザインが採用されている。
- 三人の主人公によるゲームプレイ
- 本格的な強盗ミッション
この2点は、今作ならではの要素として挙げられる。
特にキャラクターを切り替える仕組みは、同時進行的に様々なアクションシーンが楽しめる点が斬新で、「グランド・セフト・オート」として、まったく新しい体験を生み出している。
警察がしつこい
手配中は、パトカーがプレイヤーの近くに湧き、超能力者のように迫ってくる。
私は”パトカーを破壊する=>手配度も下がる”だった『グランド・セフト・オート チャイナタウン ウォーズ』の仕組みの方が良かった思う。
FPS視点でのGTA
今作は、一人称視点でも遊べる。
これまではPC版向けのModとして存在して来たが、ついに公式対応し、ムービーと一部シーン以外は”すべて”一人称視点で遊べるようになった(視点変更はシームレスに行える)。
個人的には、街を練り歩いたり、ドライブしたりする時は一人称視点で、それ以外の時は三人称視点というように、状況に合わせて視点を切り替えられるようになったことが嬉しい。
総評
今作は、一作目から続くシリーズの順当な新作。
コンテンツの量と質は『グランド・セフト・オート サンアンドレアス』に匹敵し、ゲームプレイは「Rockstar Games」の集大成とも言えるもので、非常に完成度が高く、三人の主人公はシリーズやジャンルにとっても革新的。
2013年発売だけれど、まったく色褪せることなく、このジャンルの一つのスタンダードとして君臨し続けている作品であり、シリーズやジャンルに興味があれば、今からでも絶対に遊んで欲しい一作。
初版:2016年5月9日 12:40 AM