タイトル | Ghostwire: Tokyo |
対応機種 | PC,PS5,Xbox(未定) |
プレイ時間 | 11時間~ |
ストーリー | 謎の霧により人々が消滅した渋谷。交通事故を起こし生死の境を彷徨っていた暁人の肉体に、KKと名乗る人物の魂が憑依する。二人はそれぞれの目的を果たすべく、この渋谷でさまざまな超常現象に立ち向かう。 |
本作は、「Tango Gameworks」が送るアクションアドベンチャーゲーム。日本の怪談話や都市伝説などを下地にした”超自然的スリラー”なストーリーを描く点が特徴の作品。なお、本作向けに『Ghostwire: Tokyo – Prelude』という前日譚が無料配信されている。
関連動画>>>【評価・感想】『Ghostwire: Tokyo – Prelude』レビュー
評価
サバイバルホラーの怪作『サイコブレイク』で、強烈なデビューを飾った「Tango Gameworks」。
2014年に発売された『サイコブレイク』は、さまざまな問題点はありながらも、その独特なゲーム世界や硬派なサバイバルホラー要素が好評を得た作品で、2017年には続編『サイコブレイク2』も発売された。
本作は、その「Tango Gameworks」の約5年ぶりの新作。しかし、本作は”Tangoゲー”の特徴とも言えるホラーゲームでもサバイバルホラーゲームでもない完全新作になり、色々な意味で個性的な作品になっていた。
オープンワールドは”いいとこ取り”
本作は、広い意味ではオープンワールドゲームと言える作品。
自由に行動できるエリアとして渋谷があり、メインミッションを遊ぶこと以外にも、サイドミッションを遊んだり、街を探索したりなどができ、オープンワールドゲームと言っても良い作りになっている。
そのオープンワールドは、「龍が如く」と海外のオープンワールドゲームの要素をミックスさせたものに近い。
本作では舞台を”渋谷”という限定した範囲に絞り、その中を徹底的に作り込むことで日本の街を忠実に再現している。こうした”狭くて濃い”ゲーム世界のあり方は、日本のゲームでは「龍が如く」と共通するところだが、その一方で、本作は海外のオープンワールドゲームの要素も積極的に取り入れており、「龍が如く」っぽいゲームを独自にアレンジしている。
例えば渋谷内に点在する神社は、「ファークライ」などと同じように解放するとファストトラベル地点になり、周囲の情報も更新される。他にも、天狗(別名グラップリングフック)を使ったワイヤーアクションや簡単なパルクールもできたりして、『ダイイングライト』を彷彿させる軽快な移動を実現している。
限定した範囲で、日本のある街を忠実に再現し、その中にコンテンツを詰め込むという作風は「龍が如く」を思い起こさせる部分だが、その土台は非常に海外ゲーム的で、それぞれの特徴がバランスよく取り入れられている。「龍が如く」を遊ぶ人にも、海外のオープンワールドゲームをよく遊ぶ人にも馴染みやすいゲームと言え、この組み合わせは新鮮に感じた。
それら以外では、怪談話や都市伝説をテーマにしたサイドミッション、日本のゲーム会社だからこその渋谷も見所。
サイドミッションは、メインミッションと同じくらい作り込まれたものも多く、あえて遊ぶ価値があったし、収集物もかなりあり、コレクター気質な人にとっては、これも嬉しいところだと思う(※サイドミッションはすべて遊んだ)。特にサイドミッションは、感動モノから現代社会の風刺まで、オカルトを下地にさまざまなお話が用意されていて、非常に良かった。
また、渋谷は、遊び心を交えつつ日本に住む人たちが普段見ている光景が再現されており、ただそこを歩くだけで楽しいレベル。赤の他人の部屋にお邪魔したり、一般人は立ち入れない裏側に侵入したりすることもあり、これも面白い体験だった。
メインミッションも含めて、コンテンツは十分用意されているし、基本は徒歩移動なので、オープンワールドの広さも問題なく、さまざまなものがコンパクトにまとまっている。
一風変わった”和風”FPS
アクション面は、ジャンルとしてはFPSになる。
手から「エーテルショット」と呼ばれる弾丸に似たものを発射する。属性ごとに連射速度や火力が異なり、FPSで弾薬の種類を変える感覚で、戦況に合わせて使い分けて戦う。他にもトラップ的に使える御札やステルス用の弓矢などもあり、他のFPSで見かけるものは一通り揃っている。
正直、相手がザコだと淡々とエーテルを連射しているだけで済む大味さがあるのだが、強めの敵が出て来るようになると属性や御札、ジャストガード(パリィ)を意識して戦う必要も出て来て、だんだんと面白くなってくる。さらにスキルを解放するなどして、高低差を活用したステルスも出来るようになってくると、もう少し遊びの幅も出て来て、また少し面白くなる。
とは言っても、全体的にFPS部分はお手軽さ重視と言った印象。
なので、シューティングの面白さを求めて遊ぶのはあまりお勧めしないが、渋谷の探索と”ドラマ”の合間に遊ぶ要素としては、それらの邪魔をしない堅実な作りになり、そう割り切って遊べば十分楽しいFPSになっている。
ホラーゲームなのか?
開発側はホラーゲームではないと言っているが、そうも言い切れないラインかなと思う。
たしかに、全体的に画面は明るく、相棒も常に話しかけてくるので、“一人称視点のTangoゲー”という括りにしては、ホラーゲームが苦手でも遊びやすいように配慮されていると感じる。しかし、ホラーゲームっぽいドキッとする演出もたまにあり、ホラーゲーム的な側面があるのは否定できないと思う。
「何が怖いか」は個人差がかなりあるところだと思うので、あくまでも私個人の感覚の話になるが、ホラーゲームだと思って遊ぶと全然怖くないゲームで、ホラーゲームじゃないと思って遊ぶと、ちょっぴり怖い思いをするゲームというのが、このゲームのホラー度だと思う。
ちなみに、ホラーの方向性としては、怪談話を体験しているようなひんやりとした怖さに近い。『サイコブレイク』のようなギトギトとした猟奇的で、残虐なホラーではなく、時おり愛らしさも感じるホラーと言ったところ。
総評
本作は、日本のオカルトをテーマにしたユニークで、しっかり遊べるアクションアドベンチャーの良作。ストーリーやビジュアルなど、目を引くユニークさもあるが、その一方でオープンワールドゲームの基本はしっかり押さえた丁寧な作品になり、ついつい遊び続けてしまう面白さがあった。
遊んでいるときは「ミッション内容がパターン化している」「繰り返しがやや多い」という不満もあったのだが、終わってみれば「些細なことだった」と思えるほど、満足度の高い一作だった。
個人的には、これまでに遊んだオープンワールド(もしくは風)ゲームの中では、特に遊びやすく感じたゲームだった。