原題 | The Callisto Protocol |
対応機種 | PC,PS5,Xbox Series S/X |
プレイ時間 | 11時間~ |
ストーリー | 木星の衛星「カリスト」。主人公ジェイコブは、「カリスト」内の「ブラックアイアン刑務所」に収監されていたが、その刑務所内で暴動が発生する。ジェイコブは命からがら脱獄するも、外では謎の生命体が受刑者らを襲っていた。 |
本作は、2022年に発売されたサバイバルホラーゲーム。新規タイトルながらも”『Dead Space』のクリエーターによる新作サバイバルホラー”ということで、大きな話題を呼んだ一作。
※2022年12月現在、個人輸入等を除き日本国内から購入することはできません
評価
PC(Steam)版をプレイしました
“あのDead Spaceのクリエーター、Glen Schofieldの新作”という触れ込みの本作。
2008年に発売された『Dead Space』は、”敵の四肢を破壊して倒す”という画期的なシステムと、「USG石村」を舞台にしたSFホラーなストーリーが高く評価され、”サバイバルホラーの名作”として今なお根強く支持されている作品。
しかし、その「Dead Space」シリーズは、売上不振を理由に2013年発売の『Dead Space 3』をもって休止状態になる。そうした中で2020年の「The Game Awards」にて本作が正式発表される(4gamer)。そして、それが『Dead Space』のクリエーターが手掛ける新作ということで、本作は「Dead Space」の”真の後継作”として注目を集めることになった。※リメイク版Dead Spaceの発表は2021年7月(ファミ通)
という背景があるので、「果たして本作はDead Spaceの後継作なのか?」は気になるところだと思うが、結論から言うと、“Dead Spaceのクリエーターの新作”という触れ込みは一旦忘れて遊んだ方が良いゲームだった。
“近接戦闘”特化のサバイバルホラー
本作は、近接戦闘を主体とするサバイバルホラー(アクション)ゲーム。
他のゲームだと、近接戦闘は敵が最接近して来たときだけの選択肢ということが多いが、本作では常に敵が間近にいるので、それを中心に戦っていく。一応、序盤を終えると銃も手に入るが、銃はコンボに組み込まれた攻撃の一つと言ってもよく、殴る=>殴る=>銃を撃つ=>殴るという形が、もっとも効果的な使い方になる。
肝心の近接戦闘の仕組みは、非常にシンプル。
「敵の攻撃に対して上半身を左右どちらかに揺らして避ける」「右トリガーをタイミングよく押して攻撃する」というのが基本になり、アクションゲームを遊んだことがあれば、すぐに仕組みは理解できる。「上半身を左右どちらかに揺らして避ける」にしても、同じ方向に連続して入力しなければ、スティックの向きはどちらでも良い。
そんな近接戦闘はかなり良く出来ている。
直感的に操作できるので、快適にキャラクターを動かせるし、敵を叩く感触やヒットした際の肉肉しい描写も気持ちよく、クリアまでの10時間、ほぼこれの繰り返しだったが、飽きずに遊べた。他のゲームで言えば『ラスト オブ アス』の近接戦闘の強化版に近く、シンプルだが、手に汗握る殴り合いが楽しめる。
なお、近接戦闘の難易度は割りと高めに設定されている。
操作自体はシンプルだが、ミスした際に受けるダメージはそこそこ多い。敵によって避ける回数が異なるので、それに注意して遊ばないとすぐにゲームオーバーになってしまう。また、中盤まで進むと、今度は一定のダメージを与えると変異する強敵も出現するようになり、正確な”回避”と”銃撃”を意識して戦う必要も出てくる。銃を使うのを躊躇した次の瞬間に倒されたこともあり、割りとシビアで、緊張感のある戦いが続く。
ゲームオーバーを繰り返しながら難所を突破することも多く、かなり締まったアクションゲームと言える。何度もゲームオーバーになりながら、攻略法を組み立てていくところがあり、それなりに忍耐力が求められる。個人的には、容赦なくゲームオーバーになりながらも、工夫して戦っていく部分に『サイコブレイク』っぽさを感じた。
こうしたゲームなので、私にとってはステルスパートが一種の休息ポイントになっていた。本作のステルスパートは良い意味でアバウトで、視覚も聴覚も失われた敵相手に、こちらは落ち着いて対応していくだけなので、良い具合に静かなステルスを楽しむことができた。
後述するように、本作の近接戦闘には看過できない欠点もある。
それでも、近接戦闘を中心にしたアクションは白熱していて非常に面白い。シンプルさと手強さが見事に両立されていて、上手く機能している瞬間は、本作らしい豪快で、残虐な戦闘を楽しむことができた。おそらく意図的に『Dead Space』的な要素は排除されているのだと思うが、本作のコアの部分もよく出来ており、それのおかげで文句を言いながらも最後まで遊べた。
サバイバルホラー要素
「限られたインベントリ内でアイテムを取捨選択する」「エリアを探索してアイテムをかき集める」というサバイバルホラー要素は存在するが、難易度”中程度のセキュリティ(ノーマル相当)”の場合は、そこまで厳しいものではなかった。『Dead Space』の難易度ミディアム(ノーマル相当)よりは少し意識させられるくらいの緩さだと思う。
舞台の”カリスト”
本作の舞台は衛星「カリスト」。
「カリスト」は、「USG石村」と同じくさまざまな区画から構成された閉鎖空間。オプションの探索エリアが用意されているが、基本は一本道のルートを進んでいくゲーム。エリアにはストーリー用のイベント以外にも、ストーリーの断片を物語るログなどが隠されており、それらを回収しつつストーリーを進めていく。この辺りは『Dead Space』を彷彿させる作りをしている。
あと“次世代感”のあるグラフィックで描かれるエリアは、かなり良い雰囲気。
遊んでいて、ストレスが溜まる
まず、近接戦闘は乱戦になると操作に苦労する。
相手が二体くらいまでは何とか対応できるが、それ以上になると画面外から攻撃されたり、ロックオンを上手く制御できなかったりする場面が目立った。そもそも全体的に画面が薄暗く、主人公とカメラの距離も近いので、複数を相手にする近接戦闘自体に無理があるように思える。
個人的にもっとも酷いと思ったのはボス戦。例によってボス戦も近接戦闘になるのだが、途中でザコが乱入してくる時があり、その瞬間にロックオンがそっちを向いてしまい、ボスに瞬殺されることが何度かあった。
画面上から完全にHUDを排除するデザインなので、あると不格好になるかも知れないが、せめて『バットマン アーカムナイト』のように敵の攻撃を知らせる表示は欲しかったなと思う。
あと、人によってはチェックポイントの間隔が長いのもイヤかも。
稀に前回のチェックポイントが5分以上前だった(メインメニューから確認できる)こともあり、チェックポイントの間隔は長めに取られている。その分、エリア内での行動が慎重になるし、”リスクを取って他のエリアも探索するか”と意識するようにもなるが、ゲームオーバーになると、場合によっては、その間にしたアイテムの売買もやり直しになるので、それなりに負担は大きい。
一応、メインメニューから手動セーブもできるが、少なくとも私の場合は、手動セーブのデータをロードしてもチェックポイントからの再開になっていた。手動セーブとは…。
PC版はパフォーマンスに難あり
ちなみに、2022年12月時点ではPC版のパフォーマンスがあまりよくない模様。
私の環境でも、ストア画面を開いた際や戦闘時にフレームレートが10fps以下に落ちることが何度かあった。ほぼほぼ60fpsを維持していたので遊べないレベルではないが、ガックガクになる頻度は高い方だと思う。
今後のアップデートで解消されるはずなので、あくまでも現時点での話です
総評
“致命的”寸前の欠点もあるが、終わってみれば楽しいゲームだった。近接戦闘に振り切ったアクションは面白いし、途中のステルスパートもゲームにメリハリを付けるという意味で面白いパートだった。また、『Dead Space』という大きな存在がある中で、まったく異なるサバイバルホラーを作ったというのも、個人的には好印象なところだった。
追加ストーリーのボリュームによってはシーズンパスも買うし、もし続編が発売されればそれも遊ぶ、と思えるくらいには楽しめた。ただ、定価で買ったけれど、9,000円という金額には見合わないなとも思った。