原題 | Hitman: Absolution |
対応機種 | PC,PS,Xbox |
プレイ時間 | 12時間~ |
ストーリー | 前作「ブラッドマネー」から数年後の世界。Agent 47はかつての仲間であるダイアナが組織を離反し、貴重な資産である少女ヴィクトリアを誘拐したと知らされる。47は、組織に命令され、ダイアナの排除に取り掛かるが。 |
今作は、『ヒットマン ブラッドマネー』の続編。
『スプリンターセル コンヴィクション』のように、シリーズの刷新を図った一作になり、これまでとは全く異なる作風の「ヒットマン」に仕上がっている。
なお、『ヒットマン アブソリューション HD』は今作のリマスター版にあたる。
評価
二周目を遊んだので、再レビュー
他のヒットマンとの違い│ミッション構造、暗殺、変装…
今作は、他の「ヒットマン」と比べると二つの点で大きく異なる。
一つはミッションのデザイン。
元々、「ヒットマン」は、”サンドボックス型のマップ内を自由に行動し、最終的には自分だけの方法でターゲットを暗殺する”ステルスゲーム。主眼は”暗殺”に置かれており、広く、仕掛けもたくさんあるマップ内で、各々のプレイスタイルに合わせた暗殺を追求することが面白い作品だった。
対して、今作は”ストーリー主導型”の「ヒットマン」。
ストーリーに沿った”演出重視の一本道”を突き進んでいくステージが中心になり、肝心の暗殺はストーリーの要所要所で登場する特殊なミッションという位置付けになった。
二つ目に異なる点は、ステルスプレイ自体。
他の「ヒットマン」では、変装することで周囲に溶け込むことができ、マップ内を比較的自由に行動できた。
一方で、今作では”変装しても同じ制服の人間に怪しまれる”仕様に変更され、周囲に溶け込みたい場合は「ブレンディング」と呼ばれる特殊能力を使わないといけなくなった。
- 警察官に変装しても、他の警察官に怪しまれるし、露天商に変装しても、やはり他の露天商に怪しまれる
しかし、「ブレンディング」を使用する際に消費する「インスティンクト」のゲージはすぐに尽きてしまう。
なので、基本的には変装した上で、中腰で移動したり、障害物から障害物へとターンしたりなどし、出来るだけ他人の視線に入らないようにして、エリア内を進んでいくことになる。あくまでも「ブレンディング」は最終手段として残しておく。
今作は─
- エリア自体が狭く一本道的であること
- 変装するだけでは周囲に溶け込めないこと
によって、ステルスゲームとしては「進行ルート上の敵をいかに排除するか」「または回避するか」を追求する側面が強くなり、作風としては、「メタルギアソリッド」や「スプリンターセル」に近くなった。
- ミッション構造は直線的で、暗殺よりもストーリーや演出を重視している
- 変装システムの変更により、変装してもコソコソステルスプレイする
今作は、他の「ヒットマン」と比べると、この二点が違いとして挙げられる。
私は、他の「ヒットマン」も遊んでいたこともあり、ステルスプレイは窮屈に感じ、暗殺ミッションも”サンドボックス的な環境でターゲットを自由に暗殺する”という「ヒットマン」の面白さが薄れていると感じた。
したがって、一周目の時はあまり印象が良くなかった。
ただし、次で書くように、スピンオフと割り切って遊んだ二周目は、また印象が違った。
ステルスアクションゲームとして見ると
一つのステルスゲームとしては、遊びやすく、作り込みも言うことなし。
操作方法はシンプルで、ステルス技なども”ボタン表示に合わせて”実行すれば確実に決まる。また、特殊能力を発動すると、敵の姿がハイライトされ、近くの敵に至っては進行ルートまで表示される。
今作では、“些細なミスが失敗に繋がる”ようなステルスゲーム特有のシビアさが軽減されており、あまりステルスゲームを遊ばない人にとっても、遊びやすいゲームになっていると思う。
加えて、今作はアクションゲーム的な側面も強い。
本格的にカバーシステムが導入され、一般的なTPSに近いガンアクションが楽しめる。主人公の基礎能力が高く、複数の敵をまとめて倒す「ポイントシューティング」も用意されているので、今回のAgent 47はアクションゲームの主人公のような強さがある。
今作の場合、ステルスに失敗したらやり直しではなく、そこからアクションに切り替えて遊ぶことができるので、”ステルスアクション”として遊べるバランスになっている。
“敵を倒すと減点される”という採点システムは残念だが、今作はステルスプレイ一辺倒ではなく、ステルスを中心とし、アクションも交えて遊べる作風なので、シリーズの中でも特に幅広い層が楽しめる「ヒットマン」になっている。
また、ステルスゲームとしては様々なアプローチを試せるのが面白い。
基本的にエリアは直線的なデザインだが、ゴールまでの道のりは複数用意されている。ダクトなどを通り、コソコソと警戒エリアを進んで行っても良いし、わざと騒動を起こして、その混乱に乗じて堂々と進んで行っても良いというように、ほとんどのエリアには、いくつかの選択肢が用意されている。
私は二周目ではあえて異なるアプローチ方法を試してみたが、中にはミッションの進行がまるっきり変わるものもあり、こうした作り込みは、このゲームならではの良さだと思う。
最後に暗殺ミッションは、規模は小さくなったが、暗殺自体は残っている。
暗殺の舞台となるマップは狭く、出来ることも少ないが、いくつかの方法でターゲットを暗殺することはでき、サンドボックス風味のエリアで創意工夫する面白さはちゃんと残っている。マップが狭い分だけ、ターゲットの行動パターンやギミックが把握しやすく、そういう意味では、”お手軽にヒットマンの暗殺が体験できる”とも言えて、これはこれで良さなのだと思う。
おまけにステージも多彩で、様々な世界に飛び込める。
総評
今作は「ヒットマン」としては好みが分かれる作風だが、アクション風味のステルスゲームとしては、非常に洗練された一作だった。
ステルスもアクションも扱いやすく、ステージの作り込みも見事で、2010年以降に発売されたステルスゲームの中では、かなり面白い方だと思う。
初めて「ヒットマン」を遊ぶ人は、先入観なしで遊べるので問題なしだけれど、仮に他の「ヒットマン」を遊んだことがあっても、ジャンル自体が好きな人であれば、”ヒットマンのスピンオフ”くらいの気持ちで遊べば、十分楽しめるはず。
ちなみに、今作が気に入れば『スプリンターセル コンヴィクション』も気に入るはず。
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初版:2016年6月11日 5:35 PM