- 原題:Alan Wake Remastered
- 対応機種:PC,PlayStation,Xbox
- プレイ時間:11時間~
- ストーリー:元ベストセラー作家のアラン・ウェイクは、スランプに陥り、キャリアの危機を向けていた。そんなアランを、妻のアリスは外へと連れ出し、「ブライト・フォールズ」という寂れた田舎町で休暇を取らせようとする。しかし、休暇初日にアリスが何者かに誘拐されてしまう。アランは、アリスを救い出すべく、「ブライト・フォールズ」の闇に切り込んでいく。
本作は、様々なホラー、スリラー作品にインスパイアされた作風、拳銃と懐中電灯を手に戦うユニークな戦闘が特徴として挙げられるアクションゲーム。
リマスター版は、2010年に発売されたオリジナル版を、ゲーム内容には手を付けずに高画質化したバージョン。
評価
拳銃と懐中電灯で戦う、ユニークなTPS
Remedyの代表作である『マックス・ペイン』では、様々な重火器をコートの下に隠し、人間武器庫となったマックス・ペインが大勢の敵と死闘を繰り広げたが、本作では、主に拳銃と懐中電灯を手に、闇をまとった敵と戦っていくことになる。
確かに、アサルトライフルやグレネードなどで戦った『マックス・ペイン』と比べると、アクションゲームとしてはかなり地味なのだけれど、懐中電灯を敵に照射して群れを分散させたり、足止めしたりする戦術性があり、これはこれで結構面白い。
特に難易度を上げて遊ぶと、アクションゲームにしては非力な主人公と敵との能力差を、戦術や周囲の環境を活用することで埋める重要性が増してより面白くなる。また、序盤は逃げるが勝ちになる場面もそれなりにあり、主人公の少ないスタミナをやり繰りして、敵から逃げ切るスリルも味わえて、これも面白い。
主人公は作家で、言わば一般人ということで、アクションゲームの主人公としては頼りなく感じるが、逆にそれが本作の個性となっており、弱いなりに工夫して遊んでいくことが面白い。
ちなみに、難易度はアクションゲームとしては低い方。
定期的にアイテムを補充できるので、良くも悪くもリソース管理の重要度は低く、TPSとしても、大雑把なエイムで敵を倒せるので、射撃のスキルもそれほど求められず、スタミナや懐中電灯のバッテリーだけに注意していれば、切り抜けられる場面が多い。
加えて、道中で回収できる原稿もプレイの助けになる。
原稿では”森を抜けた先で、チェーンソーの音が鳴り響いた”など、この先の展開がネタバレされていることがあり、プレイヤーがある程度準備した上で、戦闘に挑めるように配慮されている。
確かに、本作は”主人公の低い能力をやり繰りして遊ぶ”部分はあるが、そこを上手く対処できるようになれば、サクサク進んでいける難しさではあり、全体的に見れば、カジュアルに楽しめるアクションゲームになっている。
様々なメディアをミックスした作風
もう一つの面白さは、様々なメディアをミックスして描かれるゲーム世界。
各エピソードでは、必ず「ここまでのアランウェイクは」から始まるように、ゲーム自体はまるで海外ドラマのミニシリーズのような作りをしているが、一方で、小説のように、目の前の出来事を、”主人公の独白として”詳しく描写したり、独特な言い回しで表現したりもする。
しかし、単に「海外ドラマを遊ぶ」「小説をゲームとして体験する」ではなく、そこへ現実世界の存在を匂わせる実写シーンを交えることで、それらをストーリーの一部として取り込み、幾重にも重なる複雑な構造のストーリーを作り上げている。
主人公のアラン・ウェイクはもちろん、彼を”操作している”プレイヤーもろとも、複雑な構造のストーリーへと誘い込み、逃さない。
他にも、先ほども言及した”原稿”を通して確定した未来を見せることで、原稿にそう書いてある以上、抗うことができない登場人物としてのアランの心境を、遊びながら擬似体験できるようにしている点も面白く、ストーリーや主人公への理解がより深まる。
本作は、単にゲーム内に様々なメディアの要素を取り入れ、それっぽく仕上げるのではなく、それらをストーリーを描く道具として巧みに利用し、独特なプレイ感覚やストーリー構造を生み出している点が見事で、そこが本作最大の魅力となっている。
序盤以降は単調に感じる
敵の種類が少なく、対処法もほぼ共通なので、後半は飽きとの戦いでもあった。
戦闘は、最後まで懐中電灯を照射する=>バリアを剥がす=>撃つの繰り返しだし、ポルターガイスト現象にしても、飛んで来る物体に懐中電灯を照射するのみで、最後の方は作業っぽくなりがち。
私の場合、ストーリーへの関心が最後まで引っ張ってくれたが、もう少しゲーム内容に変化が欲しかったところ。
オリジナル版との比較
リマスター版は、グラフィック面の強化がメインで、私が遊んだ限りはゲーム内容は全く同じ。
主人公を含めてキャラクターモデルが手直しされていたり、ムービーも高画質化されていたりするが、あくまでもリマスターなので、オリジナル版と比べて、ビジュアル面で大きな違いはない。
ただ、ゲーム機版に関しては、高解像度や60fpsに対応したことで、Xbox 360版と比べて映像が鮮明になり、動作も軽快になっていて、プレイの快適さという点では大きな違いがある。
一方で、PC版は、元々高解像度や高フレームレートなどに対応していたこともあり、ムービーやキャラクターモデルを除けば、リマスター化されたことの恩恵はあまりなく、PC版に関しては、オリジナル版との差はほとんど感じられなかった。
定価3,000円(Epic)と、比較的安価なリマスター版ではあるが、正直、オリジナルのPC版を持っている者からすると、その値段でもちょっと割高な印象を受ける。
総評
本作は、様々な表現手法を貪欲に取り入れるRemedyらしい一作だった。
リマスター版として蘇っても、ゲーム自体は10年以上前に発売されたアクションゲームなので、相応に古臭く感じるところもあるが、数々のオカルト、スリラー作品にインスパイアされたストーリーや世界観、多層的なストーリー構造などは、全く色褪せておらず、バリーの魅力もやはり健在だ。
2010年代を代表するアクションゲームである同時に、ストーリー主導型アクションゲームの名作でもあるので、もし、未プレイで、オリジナルのPC版を所有していないのなら、リマスター化されたこの機会に、ぜひ遊んでみて欲しい。
関連記事>>>【評価・感想】『アランウェイク アメリカンナイトメア』レビュー
初版:2018年4月30日 02:40
加筆修正:2020年11月18日 7:30 PM
コメント
セールで買いました
この記事見てやるのが楽しみです
コメントありがとうございます
序盤から伏線が散りばめられているので二周も遊べますし、クリア後に
考察を読むのも面白いですよ!