原題 | Thronebreaker: The Witcher Tales |
対応機種 | PC,PS5,Xbox Series S/X等 |
プレイ時間 | 28時間~ |
ストーリー | 一作目より前。ライリアとリヴィアの女王メーヴはニルフガードの策略により、国を追われる身となる。メーヴは国を取り戻すべく、復讐の旅に出る。 |
今作は、2018年に発売された「ウィッチャー」シリーズのスピンオフ。『ウィッチャー3 ワイルドハント』の人気ミニゲーム「グウェント」をメイン要素にしたカードゲームになる。
なお、時系列的には一作目『The Witcher』より前。
評価
3のグウェントは関連クエストを全クリするくらいにはプレイ済み。ただ、『グウェント ウィッチャーカードゲーム』はほぼ未プレイ。最低難易度で、カードバトルを軽く楽しみつつストーリーを追った者の感想になります
2010年代を代表するオープンワールドRPGと言っても過言ではない『ウィッチャー3 ワイルドハント』。次世代のオープンワールドに相応しい美しく広大な世界や原作小説を下地にした骨太なストーリーが高く評価された作品だが、同時にミニゲームのカードゲーム”グウェント”の面白さも話題を呼んだ。
後にオンラインゲーム『グウェント ウィッチャーカードゲーム(2017年)』としてゲーム化されたことからも分かるように、このミニゲームが人気を博し、本来の目的を忘れて「グウェントをやらないか?」と聞き回るゲラルトさんが各地に出没した。
『グウェント ウィッチャーカードゲーム』の翌年(2018年)には、今度はソロプレイに特化したゲーム版グウェントとして今作『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』された。この「奪われし玉座」は「グウェント」に特化した内容でありながらも、『ウィッチャー3 ワイルドハント』の要素も存在するという異色作だった。
ソロプレイ版グウェント、でも少し違う?
『ウィッチャー3 ワイルドハント』の「グウェント」が基になっているので、そっちが経験済みであれば、すぐに理解できる。「入手(or 作成)したカードでデッキを作る」「バトルではターン毎にカードを出す」「カード左上の戦闘力の合計が相手を上回れば勝利」が基本的なルールになり、あとはカード毎の特殊効果を覚えれば戦闘準備は完了。
したがって、「3」の「グウェント」が好きだった人であれば、今作も問題なく楽しめるはず。
シンプルなルールだが、「攻めるか、パスするか」「どのタイミングで畳み掛けるか」などの駆け引きが楽しめる奥深さがあり、繰り返し遊んだあの「グウェント」の面白さが、今作でもちゃんと感じられた。
ただし、意外とパズル色が強いところは好みが分かれるかと思う。
スタンダードバトル | 通常のグウェント |
ショートバトル | 1ターン勝負 |
パズルバトル | 決まったデッキを使い、勝利条件を満たした上で勝利する |
パズルバトルとは、「自軍がダメージを受けずに勝利する」「指定されたカードが右端に移動するまでに勝利する」と言った条件が付いた特殊バトル。
このバトルでは、ゲーム側が用意したデッキを使い、正しい順番でカードを出し、正しい量のダメージを敵に与えるということをやる必要があり、”パズル”というだけあって、「グウェント」とは脳の使い方が違う。
たしかに、苦労してパズルが解けた瞬間は楽しい。お互いのカードの特徴を理解し、試行錯誤する中で見つけた突破口から相手を撃破した瞬間は、通常のバトルとは違う楽しさがある。ただ、その一方で、バトルによっては10回以上も試行錯誤することがあり、パズルゲームを遊んだときのような徒労感も強い。最初は変わり種の「グウェント」として楽しめていたが、次第に面倒くささを感じるようになった。
「3のグウェントが好きだったから」と遊ぶ場合は、実際はパズル色の強いカードゲームであることを理解した上で遊んだ方が良い。通常のバトルは「3」のそれと同じように楽しめると思うが、パズルバトルの方は、正解を求めて根気よく遊べる忍耐力と、ちゃんと計算して遊べる知力が求められるので、そこは注意。
パズルはスキップできる
カードゲームだが、カードバトルはスキップできる。おそらく「ウィッチャー」のストーリーだけを楽しみたいという人への配慮だと思うが、カードバトルはせず、ストーリーの選択だけして進めていくという遊び方も可能。
ちなみに、私は中盤以降は詰まったらスキップして、ストーリーを進めることを優先して遊んだ。
ウィッチャーらしい要素
ゲーム自体は、オープンワールドゲームっぽい作り。
『The Witcher』を彷彿させる俯瞰視点で、PC版であれば操作方法も同じ。ゲームでは各章ごとに「ライリア」や「マハカム」などが登場し、その中を自由に探索しつつ目的地を目指して進んでいく。
一応、オープンワールドにはサイドクエスト(もちろんカードバトル)や収集物が用意されている。今作では、資源を使って野営地を発展させることで、デッキ構築の自由度を上げたり、カードを自作したりができるようになっており、オープンワールドを探索すればするほど強くなれる。
正直、どのマップでもやることはマップ上のアイコンをちまちま潰していくことなので、作業感は強い。私は「Ubisoft」のオープンワールドゲームをよく遊ぶので、こういうチマチマとした作業は嫌いではないのだが、純粋に「カードバトルだけを楽しみたい人」「ストーリーだけを追いたい人」からすると、非常にテンポの悪いパートになっていると思う。
ストーリーでの選択は、今作でも非常に面白い。
今作では、ニルフガードの侵略を受けた世界を冒険するということで、戦時下だからこその厳しい場面が次々と飛び込んでくる。「死ぬことを恐れてすぐに降伏した街をどうするか?」「解放したニルフガード人は追放すべきか?」など、戦争をテーマにしたアドベンチャーゲームらしく、メインシリーズとは異なる切り口で、プレイヤーに難しい決断を迫る。どちらの言い分にも理解できるところがあり、どの選択も悩ましい。
“王位を追われた女王が、盗賊団をも仲間にして勢力を拡大していき、強大な軍事力を誇るニルフガードと対決する”というストーリーは、王道的で面白く、その中で繰り返される重い選択の数々は、お馴染みの「ウィッチャー」のそれで、これも面白い。あえて主人公を女王にし、敵をニルフガードとしたことで、メインシリーズと被ることなく、独自の「ウィッチャー」のストーリーが描けており、かなり良いスピンオフになっている。
ゲラルト(たち)も登場
ゲラルトも終盤に一瞬だけ登場する。原作の三巻目「炎の洗礼」の終盤、ゲラルトたちがニルフガードの軍勢を撃退したあの場面が、カードバトルになって登場する。今作を遊ぶと「なぜ、リヴィアのゲラルトと名乗れるのか」が分かる。
総評
“戦争”という切り口から「ウィッチャー」を描く良いスピンオフだった。主人公がゲラルトではない上に、「グウェント」に特化したゲームでもあり、遊ぶハードルはやや高いと思うが、「ウィッチャー」自体に興味があれば、あの世界の歴史を体験するという感覚で楽しめるはず。
念のためにもう一度書いておくと、カードバトルはスキップ可能で、ストーリーだけ追うことができる。