- 原題:DEATHLOOP
- 対応機種:PC,PlayStation,Xbox
- プレイ時間:15時間~
- ストーリー:ある一日が延々とループしている「ブラックリーフ島」。主人公コルトは、この島のループを閉じるべく、この島に潜入するが、そのためには8人のターゲット全員を、一日の間に抹殺する必要があるという。コルトは何度もループを経験しながら、ターゲットを追い詰めていく。
本作は、『Dishonored』の開発元としても知られる「Arkane Studios」が送るステルス・アクションゲーム。
ある一日がループする「ブラックリーフ島」が舞台ということで、ゲームとしてもそのループを取り入れており、ループならでの反復性をゲームに組み込んだ異色のステルス・アクションゲームになっている。
評価
※シングルプレイの感想になる
ループの面白さ
何よりも、ループを繰り返す中で、どんどん上達していくのが面白い。
本作のループは、言わば”同じミッションを何度もプレイする”こと。そして、その面白さは、”ループとして同じミッションを短い間隔で何度もプレイする”点にあり、プレイヤーが”計画=>実行=>評価=>改善”のサイクルを素早く回せる環境を用意することで、ループの度にプレイの上達がはっきりと実感できるようにしている。
“最初は主人公のアパートにたどり着くだけでも一苦労だったが、次のループでは敵に察知されることなく、アパートまでたどり着けた”というように、ループの度にゲーム内での行動が洗練されていく。
本来なら、同じミッションを何度も遊んで腕を磨くというのは、クリアした後のやり込み要素なのだけれど、本作ではそれを前提とすることで、ゲームを熟知し、上達していく面白さが手軽に味わえるようにしており、それが非常に面白い。
その上で、マップ内の状況を”敵の配置も含めて”固定化することで、二回目以降のループでは、常にプレイヤーが敵の一歩先を行けるようにしており、周回プレイでの経験が、ループ経験者の行動として結びつくようにもしている。
本作は、プレイの上達が実感できるプレイ部分はもちろん、”ループというテーマを、ストーリーや演出だけに留まらず、ゲームプレイにもしっかり組み込んでいる点が素晴らしい。
侵入者(ジュリアナ)は、唯一の不確定要素
プレイ中、プレイヤーを”本気”で殺しに来る者としてジュリアナ(AI or 他プレイヤー)が侵入してくる。ジュリアナは、主人公と同じくループごとに復活するので、クリアまでに何度も遭遇することになる。
そのジュリアナは、煩わしい存在だが、同時に欠かせない存在でもある。
先ほども述べた通り、マップ内は固定化されているので、一度攻略法が確立されると、その攻略法ばかりに頼ってしまう。そうした中でジュリアナの侵入は、プレイヤーを快適なゾーンから蹴り出し、不確定で、先の読めない状況に放り込むきっかけになる。
ジュリアナが現れると、何とも言えない居心地の悪さを覚えるが、本作に関してはそれがプラスに作用しており、同じことを繰り返す中で、ゲームにメリハリを付けてくれる一種の劇薬として機能している。
なお、ジュリアナはステルスプレイの邪魔をすることはなかった。
侵入してくる条件は不明だが、ステルスに失敗して銃撃戦になったタイミングで決まって侵入してきたので、おそらく、ステルスプレイの邪魔はしないように設計されているのだと思う。
ステルス?アクション?どんなゲームか
ゲームとしては、『Dishonored』『Prey』、『Wolfenstein Youngblood』をミックスさせたもので、近年「Arkane Studios」が手掛けて来たゲームの組み合わせのように感じる。
直感的な操作性や特殊能力の存在は『Dishonored』を、ハッキングやレトロフューチャー的な世界観は『Prey』を、激しいシューティングは『Wolfenstein Youngblood』を彷彿させ、作り込まれたマップは、まさに”Arkaneの仕事”と言ったところ。ローグライク要素や時間的な縛りは『Prey Mooncrash』から。
ゲームとしては、明らかにベースは『Dishonored』だが、シューティングもハッキングも違和感なく組み込まれており、カジュアルに楽しめるステルスから激しいガンファイトまで、どれも一級品レベルの作り込みで、非常に遊びやすく、クセがない。
「ローグライク要素」や「時間的な縛り」も、同様にクセなく楽しめる。
「ループごとに所持品がリセットされる」「死亡するとループの最初に戻る」という辺りがローグライクっぽい部分になるかと思うが、指定した所持品を次のループに持ち越せる仕組みがちゃんとあり、最低2回までは復活できる余裕もあるので、そこまで強烈な要素ではない。
また、時間的な縛りも、ミッション中は時間が進まないのでじっくり遊べるし、最後の”ターゲット全員を一日のうちに抹殺する”というのも、ゲーム側が時系列順に整理したミッションを順番にクリアしていくだけなので、限られた時間の中で、パズルを組み立てるように忙しなく遊んだりしなくて良い。
ローグライク要素や時間的な縛りは、遊ぶハードルが高そうな印象を受けるが、本作に関してはルールがかなり緩くて、それらが苦手な人でも、問題なく楽しめる良いバランスに落ち着いている。
最後に、ジャンルとしてはステルスゲームだと思う。
一応、ステルスでもアクションでも遊べるゲームなのだが、戦闘時の難易度が一般的なシングルプレイFPSのハードくらいはある上に、通常は残機2しかなく、ジュリアナが侵入してくる可能性もあるので、自然とステルス中心で進めていくことになるはず。
終盤はただループするだけになる
中盤くらいになると、使用する武器や能力は固まり、使用頻度の高いアイテムもほぼすべて持ち越せるようになるので、装備を刷新する面白さや取捨選択の楽しさがなくなる。また、攻略法も固まってしまう。
結果、淡々とループを繰り返すだけのおじさんになってしまう。
強いて言えば、ここは遊んでいて気になった。
総評
傑作です、以上。
周回プレイを、ループという形でゲームに組み込み、ゲームを熟知することの面白さを突き詰めているところがまず優れていて、試行錯誤を繰り返し、プレイが上達していく過程がとにかく楽しい。
加えて、周回プレイに耐えうる完成度の高さも見事で、こじんまりとした見た目からは想像できないくらいの奥深さにも驚かされる。
また、「ローグライク要素」「時間的な縛り」など、クセの強そうな要素が揃っているにもかかわらず、非常に遊びやすいゲームに仕上がっているという点も、本作の魅力と言える。
久しぶりに、クリアして終わってしまうが惜しいと感じたゲームだった。