原題 | Immortals Fenyx Rising |
対応機種 | PC,PS,Xbox,Switch etc |
プレイ時間 | 25時間~ |
ストーリー | 主人公フィニックスは、テュポンの企みを阻止すべく、テュポンに魂を奪われた神々を救って仲間に引き入れ、ともに協力してテュポンと対決する。 |
本作は、『アサシンクリード オデッセイ』の開発チームが手掛けるオープンワールドRPG。
「オデッセイ」では古代ギリシャを、本作ではギリシャ神話をテーマにしており、ゲームとしては、「オデッセイ」をベースにしつつ『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の特徴的な要素を取り入れた作品になっている。
評価
アサクリにゼルダを乗せろ!
ざっくり言えば、本作は『アサシンクリード オデッセイ』をベースに、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(以下BotW)』の要素を乗っけたゲーム。
確かに、一見するとかなりBotWっぽい。
ファンタジー風味のアートスタイルはもちろん、工夫を凝らした40個弱のパズル(祠)や、特徴的な建造物が目印となるオープンワールドのデザイン、エリアを闊歩する様々なミュータントたち、「頑張りメーター」を連想させるスタミナゲージなど、軽く遊んだだけで、次々と”BotWっぽい”要素が目に飛び込んでくる。
そして、ゲームシステム自体もBotWっぽい。
BotWではハートを集めて主人公の能力を強化したように、本作でも、「ゼウスの稲妻」や「アンブロシア」などを集めて主人公の能力を強化していく。また、厳密なレベル制度はなく、貧弱な状態でも強い敵と普通に遭遇する点も同じで、敵に倒されて初めて自分の弱さを知り、絶対に強くなってやると心に誓う。
こうしたゲーム全体を覆う”BotWっぽさ”によって、プレイ開始当初は、あのゲームを初めて遊んだ時のような感覚を覚えたが、そこからさらに何時間も遊んでみると、”BotWっぽさ”は表面的な部分に留まっていると気づく。
もっとも大きな違いは、BotWの特徴だった周囲の環境を組み合わせて”遊びを創造する”部分が、本作では非常に限定的な要素になっている点で、「アクションか、ステルス(奇襲)か」「どんな武器を使うか」と言った選択はできても、BotWのように、赤い樽を並べてそこに火を放ち、敵をまとめて倒すなんてことはできない。出来ることは、せいぜいモノを持ち上げて投げつけるくらい。
※本作ではステルスプレイはできないが、発見されていない状態で敵に接近すると、奇襲を仕掛けることができる
基本的に、本作は目の前に敵がいれば”突撃して剣を振り下ろす”ようなアクション一辺倒のゲームで、「アサクリか、ゼルダか」の二択であれば、”アサシンクリードに近いゲーム”となり、もっと言えば、『アサシンクリード オデッセイ』から主要な要素を抜き出したゲームと言える。
正直、“BotW風”と言うには、かなり「アサシンクリード」寄りなので、”アサシンクリード系統のゲーム”として捉えた方が、過度に期待せずに済んで良いと思う。
プレイ感覚は、まさに”オデッセイ”
今述べた通り、ゲーム自体は『アサシンクリード オデッセイ』のゲームシステムを踏襲しているので、当然ながら「オデッセイ」との共通点が多く、すでにそれを遊んだことがあれば、チュートリアルを見なくても操作できる。
メニュー画面の設計はもちろん、キャラクターの操作方法から、ビュー・ポイント(そのエリアで一番高い場所)を起点にオープンワールドを探索させるデザインなど、近年の「アサシンクリード」でお馴染みの要素がいくつも取り入れられている。
そして、本作で採用されているゲームシステムは、2017年の『アサシンクリード オリジンズ』で初登場し、それから何年にも渡って改良され続けて来たもの。なので、高速移動は当然できるし、マップ上には何個もマーカーを設置できるしと、かゆいところに手が届きまくりで、非常に遊びやすい。
確かに『アサシンクリード ヴァルハラ』まで遊んだ者からすれば、お馴染みすぎて新鮮さは全くないのだが、一方で、「アサシンクリード」での積み重ねがきっちり反映されているので、最後まで大きな不満なく遊べる。
次にアクションは、完全に『アサシンクリード オデッセイ』の系統。
戦闘時の基本操作は、「オデッセイ」とほぼ同じものが採用されている。RBで両手武器を、RTで片手武器(強打)を操作する。LB+RBでパリィし、Xで回避する。LBでアビリティを発動するというように、「オデッセイ」の戦闘スタイルを踏襲している。
主人公の動きも「オデッセイ」とよく似ていて、もし、主人公のモデルをカサンドラ(アレクシオス)に変更できれば、どっちがどっちか見分けが付かないのではとさえ感じる。
ただ、”オデッセイと同じ”ということで、戦闘は非常によく出来ている。
主人公の動作は、正確で軽快なので動かしていて気持ち良く、両手武器によるハイテンポな攻撃と、アビリティを駆使した派手な攻撃の連発も、エフェクトがゴリゴリに効いていて強烈な爽快感を覚える。
また、本作では空中戦も取り入れられており、地上で戦い、空中でも戦い、また地上に戻るというように戦況が目まぐるしく変化し、これも戦闘のスピード感や爽快感をより強くしてくれる。
戦闘だけは、最後まで飽きずに遊べた。
確かに、オープンワールドRPGとしては、マップの大きやコンテンツの量など、『アサシンクリード オデッセイ』ほど巨大なゲームではないが、”オデッセイ”を含めた「アサシンクリード」の良いところを取り込んだゲームではあり、非常に完成度の高い一作に仕上がっている。
パズルがクドく感じる
パズル(迷宮)は、どれもよく作り込まれている。
シンプルに大きな玉を転がして凹みに落とすものから、仕掛けを組み合わせたやや複雑なものまで、様々なパズルが用意されていて、あえてプレイしたくなるような良質なパズルが多い。
特に、本作は”パズルをクリアすること=主人公を強化すること”なので、パズルが面白いおかげで、主人公の能力を上げることが苦にならず、個人的には、チマチマと経験値を貯めていくことよりも楽しく感じた。
ただ、同じパズルでも、メインミッションに組み込まれたパズルはクドく感じた。
確かに、多種多様なパズルは用意されているが、何個も遊んでいると、さすがにパターンが分かってくる。なので、中盤を過ぎた辺りになると、パズルを解くというよりは、作業的に物体を押したり、引いたりして道を空けるだけになることが増えて来て、パズル自体に飽きてくる。
段々とパズルが作業っぽくなっていくのに、メインミッションの方では、最後の最後までそうしたパズルが当たり前のように登場する。そして、メインミッションのパズルは、ミニゲームとして遊ぶものと大差なく、それらが何個かセットになったようなもの。
マップ内にミニゲームとして用意されたパズルであれば、「少し飽きて来たので今は遊ばない」ということができるが、メインミッションではそれはできないので、本当はもう飽きているのに、一個ずつパズルをクリアしていかないといけないしんどさがあった。
後半は、とにかくパズルがクドかった。
私としては、メインミッションに関しては、パズルを統合して一つの大掛かりなものにするか、そもそもパズルはミニゲーム(任意)だけに限定して登場させないかして欲しかった。
総評
本作は、非常に手堅く、安心して遊べるオープンワールドRPGだった。
近年の”オープンワールドRPG的なアサシンクリード”をベースにしつつ、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の特徴的な要素を取り入れている点が面白く、パズルのクドさはあっても、全体的に見ればBotW風味のコンパクトなオデッセイで、最後まで楽しく遊べた。
同時期に『サイバーパンク2077』や『アサシンクリード ヴァルハラ』などの大作が発売されたことで、それらの影に隠れてしまった感は否めないが、オープンワールドRPGが好きなら、そのまま素通りしてしまうのは惜しいと言える一作になっている。
個人的に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で初めてオープンワールドゲームに触れた人が、次のオープンワールドゲームとして遊ぶのに最適な一本だと思う。そういう意味では、Switch版があることは大きい。