原題 | James Bond 007: Blood Stone |
対応機種 | PC,PS3,Xbox 360 |
プレイ時間 | 6時間~ |
ストーリー | 生物兵器に関するイギリスの極秘プロジェクトが外部へと流出。007ことジェームズ・ボンドは、MI6の命令を受け、その極秘プロジェクトがテロリストに渡ることを阻止すべく、世界各地を転々としながら、テロリストの行方を追う。 |
本作は、ジェームズ・ボンドを主人公にした007シリーズのゲーム版。
映画版と同じくダニエル・クレイグ、ジュディ・デンチが出演している点と、本作のために書き下ろされた脚本が特徴で、映画版のゲーム化ではなく、ゲーム向けに新しいシリーズを展開しようとした意欲作になっている。
評価
スプセル風ボンドゲーム
“ボンドゲーム”なので、正直、ダニエル・クレイグ扮するボンドを操作できるだけで、三人称視点からその姿を拝めるだけで、「買って良かった」なのだが、一つのアクションゲームとしても結構遊べる内容に仕上がっているのは、良い意味で予想を裏切られた。
本作は、ステルスゲーム界に一定の影響を与えた『スプリンターセル コンヴィクション』をお手本にしたと思われる作品で、コンヴィクション風の攻撃型ステルスを中心にしつつ、カバー型TPSも取り入れたステルス風アクションゲームだ。
映画版のジェームズ・ボンドのように、もしくはサム・フィッシャーのように、本作のボンドも敵を格闘技で倒すことができ、Xボタンで敵をテイクダウンできる。そして、このテイクダウンを決めると「フォーカス・ゲージ」が溜まり、これを使うと、またしてもサム・フィッシャーのように、3人までの敵を銃で瞬殺できる(フォーカス・キル)ようになる。
基本的に、ステルス時はこうしたテイクダウンと「フォーカス・キル」を組み合わせて遊ぶことになり、敵から隠れてコソコソするのではなく、隠れながら次々と敵を倒していく。そうしたステルスを武器に戦っていく攻撃型ステルスは、『スプリンターセル コンヴィクション』を彷彿させるものだ。
一方で、本作はTPSでもあり、どちらかと言えば銃撃戦の方がメインと言える。
TPSとしては、カバーシステムを採用した量産型のタイプ。ヒット感がなくて、銃を撃った手応えがほとんどないことを除けば、主人公の操作性や敵の動き、リアクションなどはよく作り込まれており、TPSとしてはかなりマトモに遊べる方だと言える。特に敵AIが割りと賢くて、回り込んで来たり、「ここにいるだろう」と想定して攻めて来るので、ただのもぐらたたきになっていなくて撃ち合いが面白い。
さらに、カーチェイスもよく出来ている。
開発元がレースゲームを作ってきたところということで、カーチェイスのシークエンスは本格的で、チャレンジングな挙動の車を操作しながら、入り組んだ市街地や一般車も走る公道を猛スピードで駆け抜けてゆく。ボンドらしくかっこよく遊ぼうと思うと、それなりにドライビングテクニックが必要で、レースゲームを思わせるスリリングな走りが楽しめる。
あとは、演出にも力が入っており、ボンド映画を彷彿させるド派手なアクションシーンやスタントが目白押しで、まるで映画のワンシーンを遊んでいるよう。
総じて、ステルス風味のアクションゲームとしては非常にまとまりが良く、「これはキャラゲーだから…」という言い訳は不要で、この手のジャンルのゲームとして素直に楽しめる仕上がり。
ちなみに、本作のジェームズ・ボンドのモーションキャプチャーには、映画の方で、ダニエル・クレイグのスタントを務めたBen Cookeが協力しており、ゲーム内のボンドの動きは、映画版に忠実なものになっていて、ボンドを動かしている感覚がちゃんとある。
陰謀の全容が見えないまま打ち切り
最後の最後でブロフェルド的な大ボスの存在を匂わせながらも、続編の計画が頓挫したことで、ストーリーが宙ぶらりんの状態で終わってしまっており、最後まで遊んでも消化不良気味。
現在では開発元(Bizarre Creations)は閉鎖され、販売元(Activision)も007のゲーム化の権利を失っているので、続編は絶望的。
総評
本作は、カジュアルな攻撃型ステルスと手堅いシューティングが一つになったアクション・ステルスゲームになっており、ダニエル・クレイグ主演のボンド映画の洗練されたアクションが存分に楽しめる一作に仕上がっている。
一応、続編の計画は存在したようだが、大人の事情で実現することはなかった。一作目である本作の時点で、アクションやステルス、ドライビングの質は高く、ポテンシャルの高いゲームだと言えるが、続編や精神的続編さえも登場したなかったのは残念に思う。
現在では、ほぼ中古品しか流通していないが、まだ入手できる状況ではあるので、ダニエル・クレイグのボンド映画が好きで、アクションゲームも好きなら、とりあえず買って、手元に置いておいて損はない。