『スリーピングドッグス 香港秘密警察』は、「香港」を舞台にしたオープンワールドゲーム。
プレイヤーは潜入捜査官、ウェイ・シェンとして香港の闇社会を牛耳る「トライアド」に潜入し、この組織を内側から破壊させるべく、警察官として、ギャングとして孤軍奮闘する。
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ちなみに、このゲームは元々、「Activision」の下でアジア人女性を主人公にしたゲームとして開発されていましたが、紆余曲折を経て「トゥルー・クライム」の続編として発表され、そしてキャンセルされた後に、「スクエア・エニックス」によって拾われて『Sleeping Dogs』として発売されたという。
評価
各ゲームの要素をコンパクトにまとめ上げたオープンワールドゲーム
このゲームは、簡単に言えば”元ネタのゲームから部品だけを持って来て、それらを自分たちのゲームに合わせて組み立てた”ゲーム。
「グランド・セフト・オート」型のオープンワールドをベースにして、『バットマン アーカム・アサイラム』のコンバットシステムや、『マックス・ペイン』のバレットタイム、「アサシンクリード」のフリーランを取り入れ、あとは若干の「龍が如く」成分を加えればこのゲームになる。
しかし、側(がわ)だけパクったゲームではなく、各要素のエッセンスを抽出し、このゲームに合わせた形で再利用している点は、このゲームの面白さに繋がっている。
敵の攻撃に対して「Yボタン」でカウンターを決め、反撃していく格闘戦は、『バットマン アーカム・アサイラム』そのものなのだけれど、敵の急所を徹底的に痛めつける技や、周囲の環境を活用して敵を”潰す”ギミックによって、残虐性の高いユニークな戦闘を作り上げている。
銃撃戦にしても、スローモーションの中で敵に銃弾を撃ち込み、血しぶきを浴びながら次々と敵を倒していくのは、爽快感があるのと同時に、アクション映画のワンシーンをそのまま操作している感覚もあり、遊んでいても、観ていても楽しい。
要所要所で登場する「フリーラン」も、ジャッキー・チェン張りのアクションが簡単な操作で楽しむことができる。「フリーラン」とは別に走行中の車に飛び移るスタントもできるが、主人公の中身はジャッキー・チェンなのでそんな離れ技も簡単にできる。
- グランド・セフト・オート型オープンワールド
- バットマン風の格闘戦
- マックス・ペイン風の銃撃戦
このようにこのゲームは、元ネタの要素を拝借して作られたゲームだけれど、一方で、このゲームならではのアレンジもちゃんとあり、それが結構、センスが良い。
例えば、このゲームでは画面上に目的地のアイコンを表示させ、進行ルートも道路上に表示させることで、”ミニマップをずっと見付けないといけない”問題に対処し、オープンワールドゲームあるあるとも言える”パトカーの執拗な追跡”も、追跡車両を走行不能にすれば逃げ切れる仕様にすることで、ダラダラとカーチェイスが長引かないようにしている。
また、定期的に自宅に戻らせたり、自宅で(特にゲーム的な意味はないが)お手洗いに行けたり、屋台や店で食事や買い物ができたりなど、”生活シム”的な面にも力が入っており、高い没入感を演出している。
- 画面上にアイコンが表示されるのでミニマップだけを観る必要がない
- パトカーの追跡は追跡車両を破壊するだけでOK
- 生活シム的な部分に力が入っている
確かに、(おそらく)開発規模的な部分に依る粗っぽさやチープさがないとは言わないが、それでも”それぞれの要素を上手くまとめ上げた”オープンワールドゲームではあり、開発元のセンスが光るゲームでもある。
反復的で、粗っぽく感じる
幸い、ストーリーへの関心が最後まで引っ張ってくれたが、サイドミッションは反復的で、メインミッションにしても、いくつかのテンプレートを使い回しているので、中盤以降は「またこれか」と思いながら遊んでいた。
あと、車に乗っている際のカメラの挙動が独特で、カメラが意図せずクルクル回ってしまったり、操作キャラクターの関節が硬くて、一部の銃撃戦で難儀したりなどして、この辺りは遊びにくく感じた。
総評
本作は「グランド・セフト・オート」のフォロワーの中では、特にユニークで、完成度の高いオープンワールドゲームになっており、香港を舞台にしたバイオレンスなゲームプレイは、このゲームならではの魅力であり、最大の長所になっている。
Steamからは日本語版が消え、リマスター・完全版(Definitive Edition)は日本語版無しなど、日本語で遊びたいゲーマーにとってはプレイするハードルがやや高いゲームではあるが、オープンワールドゲーム好きなら遊んでも後悔しない一作だ。