原題 | S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL |
対応機種 | PC |
プレイ時間 | 15時間~ |
『S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL』は、チェルノブイリ原発事故の後、2006年にその跡地で謎の大爆発が起きたもう一つの現実世界を舞台にしたオープンワールド系FPS・RPG。
大爆発によって生まれた危険地域は「ゾーン」と呼ばれ、その中では「STALKER(ストーカー)」と呼ばれる者たちが活動しており、彼らは「ゾーン」で様々な仕事を請け負い、独自の生活を送っていた。
プレイヤーは記憶喪失となった「STALKER(ストーカー)」の一人”Marked One(通称 まーくん)”として、この過酷な世界でサバイバルする。
評価
A-Lifeによって命を吹き込まれた世界で、STALKERとして生き抜く
このゲームを語る上で、「A-Life」は外せない。
「A-Life」とは、「ゾーン」で活動するNPCやミュータントの行動を管理するシステムの名称であり、このゲームではその「A-Life」によって、NPCやミュータントがそれぞれのスケジュールに合わせて自律的に活動している。
開発当初に想定していた「A-Life」と比べると、製品版のそれは規模が小さくなってしまったようだが、遠征から戻って来ると仲間が近くの兵士に殺されていたり、遠くの方で仲間がミュータントを攻撃していたりなど、”小さな部分では”プレイヤーが居なくてもゲーム世界は動き続けている。
この「A-Life」によって、本作のオープンワールドは一種のシミュレーター化しており、プレイヤーはその中でNPCやミュータントに混じって、過酷な生存競争にさらされることになる。
そんな過酷な世界にもかかわらず、このゲームはプレイヤーを裸同然のまま放り出す。
詳しい説明は特になく、“拳銃一丁”だけ持たされて「あとはご自由に」がこのゲームの導入部分であり、いきなりゲームのコアの部分を体験できる一方で、「何をすべきか」が全く分からない状態に陥る。
試しに拳銃を撃ってみる。あまりにも頼りなく”このまま外の世界へ繰り出すのは危険”と判断する。
「どうすれば良いんだ…?」
と立ちすくんでいても誰も助けてくれない。ここは”ゾーン”なのだ。
とりあえず、近くの奇襲作戦に参加してみる。
右も左も分からない状態で、武器は頼りない拳銃のみだったが、他のメンバーと敵を奇襲し、成功し、報酬を得る。さらに戦利品をかき集めてトレーダーに売却することで、オマケまで付いてきた。
「そうか、こうやってお金を稼げば良いのか」
と、STALKERとして生きる術を学んだ瞬間だった。
その後、検問所で兵士に攻撃されたので、奇襲の際に拾ったショットガンを手に応戦。その結果、兵士のアサルトライフルやサブマシンガンを手に入れる。
「なるほど、敵を倒して装備を奪えば強くなっていくのか」
と、ここでもSTALKERとして生きる術を学んだ。
確かに誰も何も教えてくれない。
でも、ゾーンが教えてくれる。
このゲームは、プレイヤーが自発的に行動する中で”生きる術を学んでいく”ゲームであり、プレイヤーがどれだけ場数を踏んだか(何を経験し、学んだか)がそのまま主人公の強さへと繋がる。
- プレイヤー自身も過酷な生存競争にさらされる
- その中でSTALKERとして生きる術を学び、成長していく
ゾーンで揉まれる中で”一人前のSTALKERへと成長していく”過程は、「サバイバルFPS」として非常に面白い体験を生み、「A-Life」によって、オープンワールドもただの広い空間ではなく、文字通り”生きた世界”になっている。
こうした骨太なゲームプレイと、ユニークなオープンワールドは色褪せない本作の魅力であり、このゲームの面白さを決定付ける要素になっている。
FPSとしての面白さ
見た目は地味だけれど、実際に遊んでみると撃ち合いがかなり面白い。
基本的に銃はどれも粗悪品(もしくはリアル志向)なので命中率が低いが、かと言って敵に近づき過ぎると急所に銃弾を食らって倒されるので、上手く遮蔽物を利用しながら敵との距離を詰めていく必要がある。
しかし、このゲームの敵はそこそこ賢く、プレイヤーが一箇所に留まっていると背後に回って来たり、側面から攻撃して来たりして、敵もプレイヤーを殺すために頭を使って行動する。
たまにわざわざ遠回りして背後に回って来ることもあり、その執拗さに感心する。
やはり、脳ミソが詰まった敵との銃撃戦では、的を撃ち抜くこと以外にも意識すべきことがあるので、小規模な銃撃戦でも白熱したものとなり、最後まで緊張感のある撃ち合いが楽しめる。
ちなみに、重量制限が絶妙。
アイテム自体はよく落ちているが、厳しい重量制限があるのですべて回収することはできない。「弾薬は何箱まで持ち運ぶか」「食料は何日分必要か」などを考え、アイテムを取捨選択するのは”サバイバル感”を上手く演出しており、これも良かった。
序盤の取っ付きにくさと、難易度のバランス
もし、予備知識なしで遊んでいたら投げ出していたかも知れない。
最初の銃は使い物にならないし、そんな銃を手にいきなり戦闘に参加させられるし、専門用語の数々もよく分からないしと、とことんプレイヤーを置いてけぼりにしてゲームは進んでいく。
「遊びながら覚えろ」はこのゲームの魅力ではあるが、一方で少なくない数のプレイヤーを突き放す要素でもあり、もう少し丁寧な導入部分があっても良かったと思う。
あと、終盤の難易度がやけに高いことも気になった。
終盤は敵が硬くなり、意地悪な配置にもなっているので、セーブとロードを繰り返して遊ぶことになり、少し進んではセーブし、出合い頭に瞬殺されればロードして…が本当に退屈だった。
中盤までは銃撃戦と探索が楽しくて文句なしだったが、終盤以降の展開は「あの面白さはどこに行ったのか?」と感じるくらいイマイチだった。
総評
2007年発売であっても、全く色褪せていない。
急所に直撃すると即死するピリッとした撃ち合いはもちろん、「A-Life」によってシュミレートされたオープンワールドやSTALKERとしての生活、ゾーンを覆う独特な雰囲気など、このゲームならではの面白さが詰まっている。
正直、終盤はスキップしたかったくらいだが、それを考慮しても「名作」と自信を持って言える一作に仕上がっている。
イディーカムニエー