原題 | 龍が如く0 誓いの場所 |
対応機種 | PC,PS4(5),Xbox |
プレイ時間 | 30時間~ |
『龍が如く0 誓いの場所』は、”極道”をテーマにしたオープンワールドゲーム。
今作は「龍が如く」シリーズの6作目にあたるが、一作目『龍が如く』の17年前を描く作品になっており、シリーズの前日譚を描くストーリーが用意されている。
評価
小さくても濃い箱庭、まるでテーマパーク
バブリーな日本が眩しすぎる。
今作では、1988年の「神室町(東京)」「蒼天堀(大阪)」が舞台として登場する。”失われた20年”なんて言われた時代に生まれ育った私からすれば、高度経済成長にわく日本は眩しすぎて直視できない。
という話はこれくらいにして、やはり国産ゲームだけあって、「神室町」「蒼天堀」の日本っぽさが見事。オープンワールド自体は狭いが、その分だけ細かな作り込みに力が入っており、どのシーンを切り取っても、私(大阪人)が目にする景色が見事に再現されている。
個人的には、オープンワールドゲームの舞台は欧米が大半なので、「神室町」や「蒼天堀」のような見慣れた世界を自由に歩き回れるというのは、それだけでも価値のある体験に感じる。
また、「神室町」や「蒼天堀」はその見た目以上に、中身が濃い。
オープンワールドゲームの中には広くて何もないものもあるが、今作の方は狭くても出来ることが山ほどある。飯屋やゲーセン、”大人の社交場”など、実際に入り、遊べる場所がしっかり用意されており、その数とそこでのミニゲームのクォリティは、他のオープンワールドゲームでもなかなか見られないレベル。
特に桐生一馬の「不動産屋」、真島吾朗の「キャバクラ」をテーマにした経営シムは、これ単体でも十分遊べる仕上がり。前者は土地を買い占めてじゃんじゃんお金を稼ぎ、後者はキャバクラの支配人として、お客にじゃんじゃんお金を使わせる。で、稼いだお金は土地や店などに投資するのだが、投資=>回収=>投資=>回収の繰り返しはかなり中毒性が高い(課金ゲーじゃなくて本当に良かった)。
あと、サイドストーリーも、社会風刺やブラックジョークが利いていて読み物として面白い。
そうした”遊び”がたくさん用意されているので、「神室町」や「蒼天堀」をブラつくことは、テーマパークでアトラクションを巡るのに似ており、歓楽街での体験に特化したオープンワールドとして、「神室町」や「蒼天堀」は非常によく出来ている。
確かに、オープンワールドゲームとしては狭くて制約も多いが、的を絞るからこそ実現できる密度の高さがあり、短所を長所として捉え、”龍が如くらしい”オープンワールドを作り上げている。
加えて、舞台を「神室町」と「蒼天堀」に絞ることで、主人公との距離も縮まる。
狭い空間を何度も行き来していると、嫌でも街を覚えることになるし、サイドミッションを進めていくと顔馴染みも増えて来る。“とりあえず、お気に入りの店員がいるコンビニに寄って、その後に事業の様子でも見に行くか”なんてしていると、なんだが桐生一馬や真島吾朗として疑似生活を送っているような感覚になってくる。
プレイヤーと主人公との距離が近くなると、やはりストーリーへの没入感も増すことになり、中盤以降は、主人公たちと同じ目線でストーリーを追っている自分がいた。
一般的なオープンワールドゲームとは全く異なるタイプではあるけれど、独自の進化を遂げたオープンワールドゲームとして、非常に楽しい時間を過ごせた。
戦闘は面白くて、面白くない
「龍が如く」と言えば、やはり戦闘は外せない。
桐生一馬(や真島吾朗)の超人的な技を駆使し、絡んで来たヤクザやチンピラなどをボッコボコにしてやるド派手な戦闘は、「龍が如く」を象徴する要素の一つだが、一方で”遊ぶ人を選ぶクセの強さ”もある。
「龍が如く」の戦闘は、どこか格ゲーっぽさを感じさせるところがある。見た目の派手さとは裏腹に、実際は”敵の技に対して瞬時に反応し、自分の技を繰り出していく”という基本動作をしっかり守らせる戦闘になっている。要するに、勢いに身を任せて敵を倒していくのではなく、しっかり計算した上で的確に敵を攻撃しないといけないので、見た目以上にプレイスキルが求められる。
特にボス戦では、ボス固有の特殊技や体力ゲージの多さなどもあり、より基本動作を守る重要性が増す。そんなボス戦では、ボスの技を防御や回避で完璧に避け、ボスの鉄壁の防御も、上手く破って攻撃を加えていくことになり、その一進一退の攻防は、格ゲーで強い敵と戦っている時の記憶を思い起こさせる。
こうした見た目と実際の戦闘とのギャップは、このゲームを手に取る前に注意しておきたい部分で、ここをしっかり埋め合わせておかないと、「龍が如くの戦闘は難しい」「龍が如くの戦闘はつまらない」となってしまうと思う。
さて、そんな「龍が如く」の戦闘は、面白い時と面白くない時が両極端。
中盤までは雑魚は雑魚らしく、ボスもボスらしくという感じ。雑魚なら大勢いても、多少大雑把に遊んでもテンポよく敵をなぎ倒せて爽快感があり、ボス戦にしても「ちょっと難しいかな?」と感じるくらいで、基本動作をしっかり守っていればクリアできるバランスに収まっており、カジュアルすぎず、ハードすぎずで遊びやすい。
ただ、中盤以降は骨のある雑魚が増えて来ることもあり、雑魚戦でもチマチマとした戦闘になりがちで、ボス戦に至っては、各ボスに体力ゲージが何本も設定されるようになり、それを削っていくだけでも結構時間が掛かり、”攻撃しては防御する”を延々と繰り返す羽目になる。
個人的に、賛否両論あるボス戦は好きな方。ボスの動きをじっくり観察し、それに合わせて技を繰り出して戦っていくのは、雑魚戦にはない奥深さがあり、かつ自分自身の上達も実感できるので、遊んでいて面白い。
しかし、そんな”ボス戦が好きな”自分でも、さすがに終盤の体力ゲージが何本もあるボスとの戦いは、戦闘というよりも体力ゲージを削っていく作業に感じられてしまい、全然面白くなかった。また、骨のある雑魚との戦いも、さっさとケリを付けて先に進みたいのに出来ないうっとうしさがあり、こちらもあまり面白くなかった。
最終ステージは、ボス戦のじれったさに嫌気が差し、難易度をイージーに下げてさっさと終えてしまった。個人的にはノーマルとイージーの中間くらいの難易度が欲しい。
よって、今作の戦闘は”面白くて、面白くない”。中盤辺りまでは”爽快感重視の雑魚戦と、程よく手強いボス戦”が良いバランスで、アクションゲームとして楽しく遊べたが、中盤以降は難易度の上昇に合わせてその面白さも消えてしまった。
私はもっと軽く、ややアバウトな操作でも攻略できるくらいが好みなので、今後は難易度イージーで遊ぼうと思う(多分)。
遊んでいて気になる点
結構独特なゲームなので、慣れるまで苦労する
オートセーブが無いので、ミッションによっては中断するとミッション開始前から再開になる。また、アイテムの自動ソート機能が無いのでアイテム整理が面倒だったり、”QTE”があったりなど、海外ゲームをよく遊んでいると「?」に感じることが多い。
あと、「龍が如く」ではお馴染みの(?)敵のエンカウントも面倒。相手から絡まれるのではなく、街で面倒を起こしている輩にこっちから絡みに行く方が遊びやすくて良いなと思う。
この辺りは遊んでいて気になった。
総評
『龍が如く0 誓いの場所』は、非常に完成度の高いアクションゲーム、オープンワールドゲームだった。
「神室町」や「蒼天堀」は、まるでテーマパークのように”遊び”が詰まっているし、メインストーリーにしても、エンジンの掛かりは遅いが、最後までプレイヤーを引っ張ってくれる力強いストーリーが用意されており、メインも充実している。
今作はシリーズ最初のストーリーを描く作品ということもあり、私のようなシリーズ初心者にとっては、入門編に最適な一作でもあった。
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