約8年ぶりの続編となった『Mafia 2』の批評。前作『Mafia: The City of Lost Heaven』は、重厚なマフィア映画的な物語と硬派なゲームプレイが高い評価を受け、今なお根強い支持を集める名作として知られている。 Good
- 硬派なTPS面
- 多彩なミッション
- 往年のマフィア映画をリスペクトした物語
Bad
- 一部の古臭い内容
- 細部が甘い「エンパイア・ベイ」
物語の背景としてのオープンワールド
各章ではまるで「決まりごと」のように、主人公が起床したところから始まり、仕事を終えて就寝するまでが描かれる。
その間には朝食を食べて身支度をして、待ち合わせ場所まで車を走らせるという一連の流れも必ずと言っていいほど用意されており、そこには強い拘りを感じる。
チャプター方式を採用した他の作品では、わざわざオープンワールドなんて作らず、車での移動もカットシーンで済ますことが多いが、今作は敢えて「エンパイア・ベイ」という広い街を作り上げ、そこでの主人公の生活を擬似体験させるというやり方を取っている。
実際に「街」を用意し、そこで営まれていた主人公の日々を、端折ることなくプレイヤーに遊ばせることで、ゲームプレイと物語の距離を縮めることに成功しており、物語自体にもより真実味が生まれている。
この点は前作と同じであり、当時の開発陣が抜けていても、約8年間のブランクを経ていても、全くブレていない。
しかし、街の作り込みが甘く現実味に欠ける時があるのは欠点。
駅や線路はあるものの列車自体は走っていないし、住民の顔や服装も少ないパターンを使い回しているだけで、街中にドッペルゲンガーが山ほど居る状態はあまりにも不自然。
同時期に発売された『Grand Theft Auto IV』が、あれだけのゲーム世界を作り上げているのを見ると、今作の「エンパイア・ベイ」は虚構の街に感じられる。
手堅くて脆いゲームプレイ
まず、TPSとしては手堅い作り。
オーソドックスなカバーシューターで、これと言って目立つ要素は無いのだが違和感なく遊べる。
これは他の作品よりも優れている”数少ない”点なのだが、主人公のアニメーションが多彩で、更に『Grand Theft Auto IV』よりもゲーム的な動きをするので、動かしていて気持ちが良い。
また、車の挙動に関してもタイヤが地面を掴んでいる感覚があるので、オモチャの車が道路を滑るように走る奇妙なことにはなっていない。
オマケ程度ではあるが、燃料や交通ルールと言った縛りも面白い。
一方で、ゲームプレイ面は全体的に古臭い作りになっている。
現実的なゲーム世界にも関わらず、逃亡者の頭の上にデカデカとアイコンを表示させられる感覚を持つ人たちが作っているので、これは仕方ないのかも知れないが「小さな粗さ」が散見される。
防戦一方のカーチェイス、警察の異常なまでの追跡や厳しい時間制限など、とにかく苛々させられることが多い。
ミッション内容自体は前作同様にそれぞれが多彩で面白いだけに、こうした欠点が目に付く。
総評、良くも悪くも続編
執拗なNPCの使い回しや後半の展開を見ると、色々と厳しい中での開発だったのではないかと邪推する。
それが影響してかどうかは不明だが、手堅い作りのTPS面や多彩なミッションなど良い所はあるのだが、全体を通して見ると粗さが目立つ作品になっている。
決して悪い作品ではないのだが、満を持して登場した続編としては物足りなさを感じる。一つのアクションゲームとして見れば、良作と呼べる出来ではある。