【感想・評価】『ネバーセイ・ネバーアゲイン(ネタバレ)』レビュー

「007」シリーズ
原題 Never Say Never Again
公開日 1983年10月7日
ストーリー 007への復帰を目指すジェームズ・ボンド。

新たに着任したMは、ボンドに鈍った体を鍛えるように命令し、ボンドはロンドン郊外の治療施設を訪れる。

その治療施設にて、ボンドはスペクターの一味を発見し、スペクターが何かを企んでいることを知る。

後日、スペクターは米軍から核兵器を盗む。

ボンドはスペクターの悪巧みを阻止すべく、007に復帰し、この件を調査する。

ショーン・コネリー主演のスパイ映画『ネバーセイ・ネバーアゲイン』のレビュー。

ネバーセイ・ネバーアゲインの感想/評価

ショーン・コネリーがボンド役に復帰

今作は『007 ドクター・ノオ』『007 ロシアより愛をこめて』『007 ゴールドフィンガー』『007 サンダーボール作戦』『007は二度死ぬ』『007 ダイヤモンドは永遠に』にてジェームズ・ボンドを演じて来たショーン・コネリーのボンド復帰作。

とは言っても、今作は”外伝作扱い”であり、同年にはロジャー・ムーアが主演する『007 オクトパシー』がシリーズ最新作として公開されている。

今風に言えば、ダニエル・クレイグとピアース・ブロスナンのボンド映画が同じ年に公開されるということで、シリーズファンにとって熱い年だったのではと予想する。

さて、広い意味で”ボンド映画”として見れば今回はイマイチだった。

『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は、前後半のクォリティの差が激しい内容になっており、残念ながら序盤をピークに尻すぼみしていく。

前半は”お払い箱にされた”ジェームズ・ボンドが現役復帰を目指す過程が面白く、ボンドの内面に迫っている点が異色だった。

※直接的な言及はないが、『007 ダイヤモンドは永遠に』の続きっぽい

ロジャー・ムーアの言葉を借りれば、ジェームズ・ボンドというのは”汗はかかないし、髪も乱れない”人間で、全てを完璧にこなすことが当たり前だった。

その点、今作のボンドは衰えによってスパイとして精彩を欠き、古巣からも過去の遺物として扱われる人物であり、言わば”俺もまだ出来る”と信じる引退間近のスポーツ選手のようなもの。

前半はそうしたボンドの様子が描かれており、危機に対して”やっぱり、俺しかいないじゃん”となって自信を取り戻す過程がよく書かれており、面白い。

「年代物の車ですね」に対して、ボンドが「まだまだ現役だよ」と口にする辺りも良かった。

ただし、ボンドがドミノと接触した辺りから雲行きが怪しくなる。

後半はゲーム対決をしたり、ダンスしたりなど尺を埋めるためのシーンが目立ち、ボンドを狙う敵たちもやること全てが後手に回り、ボンドの敵としての凄みがない。

コメンタリーにて、今作は”4つの脚本を一つにまとめた”と明かされるが、それによるチグハグさが後半に出てしまっており、終わりに向けて失速していく。

クライマックスもショボくて、冒頭の方が何倍も”クライマックスしている”。

レビューにも書いている通り、『007 オクトパシー』も面白くなかったが、アクションに力が入っている分だけあっちの方が面白いと感じた。

特典映像は面白い

特典映像にコメンタリーが含まれているが、その大部分が「この映画を作るのは大変だった」という話になっており、苦労話の数々が非常に興味深い。

“4つの脚本を一つにまとめた”話、訴訟と隣合わせで苦労した話やとにかく完成を優先した話などが明かされ、製作時の苦労が次々と明かされる。

また、俳優に関するこぼれ話も多く、キム・ベイシンガーの夫が無断で撮影に参加して大変だったという話や、ショーン・コネリーがバラバラの映画を繋ぎ止めたという話などを聞くことができる。

個人的に「オープニングのアクションシーンは完璧だったのに、音楽を入れられて台無しにされた」という話が印象に残った。

まとめ

ショーン・コネリーのボンド復帰を楽しむだけの映画。

“引退間近のボンド”という切り口と、人間性を感じさせるボンド像は魅力的だが、終わりに向けてストーリーが崩れてゆき、アクションも尻すぼみする。

ちなみに、この映画にはローワン・アトキンソンが出演しており、後に彼はボンド映画をパロディした「ジョニー・イングリッシュ」シリーズに主演する。

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