『タクシードライバー』のレビュー。
紹介
タクシードライバーのストーリー
タクシードライバーとして働く帰還兵のトラビス。戦争で心に深い傷を負った彼は次第に孤独な人間へと変貌していく。汚れきった都会、ひとりの女への叶わぬ想い – そんな日々のフラストレーションが14歳の売春婦との出逢いをきっかけに、トラビスを過激な行動へと駆り立てる!!
引用元 – Youtubeより
タクシードライバーの出演陣
役者 | 役名 |
ロバート・デ・ニーロ | トラヴィス |
シビル・シェパード | ベッツィー |
ジョディー・フォスター | アイリス |
ハーヴェイ・カイテル | スポーツ |
ピーター・ボイル | ウィザード |
感想
トラヴィスの中で煮えたぎる感情
世間に自分の居場所がないと感じる主人公・トラヴィス。
彼の言う社会のゴミ(ヤク中、売春婦、ゲイなど)の世界には当然居場所はなく、かと言って一般人の世界にも居場所はないと感じており、自分の拠り所がないことに苦しんでいた。
彼にとって”初デートでポルノ映画を観に行く”ことはアリだが、彼以外の人間からすればそれはナシであり、そうした自分の価値観と世間一般のズレが彼を自分の殻に閉じ込めさせる。
したがって、トラヴィスには悩みを打ち明ける仲間や、不安を紛らわせてくれる友だちがおらず、自分の頭の中で考えを巡らせ、否定して、肯定するので思考がどんどんと凝り固まり、認知の歪みも深刻化してゆく。
もともと、トラヴィスは臆病者だった。
同年代の男に叱責されるとその場からそそくさと逃げ出し、ポン引きに追われている少女に手を差し伸べる勇気もない。
けれども、彼の中では暗い感情がグツグツと煮えたぎっており、それが中盤以降の”社会への復讐”に発展していく。
特に前半は、”心に暗い部分はあるけれども気丈に振る舞っていた青年”が人々に拒絶され、その度に失望させられるうちに、少しずつ心の中で狂気性が育まれていく描き方が見事だった。
世間一般もそれなりに狂っている
トラヴィスはアンチ・ヒーローながらも、最後にはヒーローとして世間に受け入れられる。
ジョディー・フォスター演じるアイリスを救うべく、トラヴィスは単身でギャングの巣窟である売春宿に乗り込み、次々とギャングを撃ち殺していく。
この時点で、トラヴィスはれっきとした連続殺人犯になったわけだが、世間は彼を”少女を救うべく売春宿に一人で押し入ったヒーロー”として褒め称える。
初デートでポルノ映画に連れていき音信不通となっていた女性ベッツィーも、そのニュースを知ってトラヴィスのもとを訪れる。
これにより、”社会にオレの存在を知らしめる”という彼の目的は果たされたことに。
ただし、トラヴィス自身は何も変わっていないし、もっと言えば大統領候補を暗殺しようとした狂気もそのまま。
なのに、世間は彼をありのままに受け入れてくれる。
もっともらしい理由があれば連続殺人を肯定してくれる人たちと、目の前の悪を見て見ぬ振りする人たち。
結局、トラヴィスの世界と世間一般の違いなんてほとんどなく、”どっちもそれなりに狂っている”という皮肉な現実を観ている者に突き付ける。
また、エンディング前に一瞬映る”ミラー越しのトラヴィス鋭い視線”は、今でも彼の中に”いつ爆弾してもおかしくない”時限爆弾がチクタクチクタクと動いていることを予感させる。
そんなトラヴィスが再びニューヨークの街に消えていくシーンは、観ている者の恐怖心を刺激する印象的な最後になっている。
ベッツィーの負い目に付け込まなかったトラヴィスは男としてクールだったが。
なぜ、大統領候補を狙ったのか?アイリスを救ったのか?
大統領候補を狙ったのは、一目惚れしたベッツィー繋がりで大統領候補を知ったから。
また、アイリスを助けようとした動機は簡単に白馬の騎士を演じられるから。
基本的にトラヴィスの原動力は「俺様を無視する世間に俺様の存在を知らしめる」なので、それが手っ取り早く出来そうなのが大統領候補であり、アイリスだったということ。
まとめ
狂人・トラヴィスを通して社会の闇に切り込んだ名作。
タクシーから眺める暗いニューヨークは印象的で、バックで流れる音楽も耳に残り、ロバート・デ・ニーロとまだ10代のジョディー・フォスターの演技も素晴らしかった。
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