ジョージ・クルーニー主演のクライム映画『ラスト・ターゲット』のレビュー。
紹介
ラスト・ターゲットのストーリー
人目を避けるようにスウェーデンの雪山で恋人と一緒に暮らしていた主人公・ジャック。
ある時、何者かの襲撃を受けたジャックは追われる身となり、カステル・デル・モンテという名のイタリアの田舎町まで逃げて来る。
そこでジャックはクララという女性に出会う。
ラスト・ターゲットの出演陣
役者 | 役名 |
ジョージ・クルーニー | ジャック |
ヴィオランテ・プラシド | クララ |
テクラ・ロイテン | マチルダ |
パオロ・ボナッチェリ | ベネデット神父 |
ヨハン・レイセン | パヴェル |
感想
美しく、渋い
美しい映画でした。
監督自身が著名なフォトグラファーでもあるということで、画作りに強い拘りを感じる作品になっており、それ自体が個性として際立っています。
アクションシーンにしても、手ブレやズームを多用して”それっぽく”見せることはせず、映画ならではの横に広い画面を最大限に活かした映像表現で楽しませてくれます。
(原付に乗って追跡する主人公さえもカッコよく描くセンスに痺れます)
また、この映画は台詞が必要最低限に抑えられています。
台詞の空白はジョージ・クルーニーの繊細な演技が見事に埋めており、彼の表情や仕草がジャックの胸のうちを映し出し、映画全体のトーンをコントロールします。
肝心のストーリーも、見応えがありました。
“目撃されてしまったから”という理由で恋人を射殺できる男が、一人の女性と出会ったことで今までの生き方を改めようとする姿と、やっぱり相応の代償が求められる現実を淡々と描います。
蝶(バタフライ)の意味
西欧では蝶は「魂」や「生死」と結び付けられているようです。
ReligionFactsによれば、古代ギリシアやローマでは人間の魂は蝶の形となって旅立つと考えられていたようですし、キリスト教では復活の象徴のようです。
この映画は”蝶が飛び立つシーン”で締めくくられていますが、その蝶はジャックの魂を表現しており、自分の死を持って罪を償い、自由になれた姿なのかも知れません。
ストーリーはそれなりに粗い
- 主人公を狙っている人物 or 組織
- 主人公が狙われている理由
- 主人公は何者なのか
という辺りがよく分からないままです。
仮に主人公・ジャックが狙われた理由が”足を洗いたいと言ったから”であれば、「冒頭に襲って来た連中は誰だったのか?」という話になりますし、そうじゃない場合も「なぜ狙われるのか?」という話になります。
また、”殺す予定の男が組み立てた”スナイパーライフルを何の疑いもなく使ってしまう殺し屋も、個人的には違和感がありました。
お話自体は、一貫して”裏社会で生きて来た男の孤独と苦悩”を描くので破綻はしていませんが、細部の詰めは甘いという印象を受けました。
まとめ
美しく、見応えあるクライム映画でした。
ジョージ・クルーニーの繊細な演技は素晴らしく、カステル・デル・モンテの町並みも映画に命を吹き込みます。
確かにストーリーはやや粗くはありますが、それを考慮しても私にとっては心に残る一作になりました。