【感想・評価】『マイ・ボディガード(ネタバレ)』レビュー

アクション映画のレビュー

デンゼル・ワシントン主演のアクション映画『マイ・ボディガード』のレビュー。

紹介

マイ・ボディガードのストーリー

テロと誘拐が頻発するブラジル。

孤独な元兵士・クリーシーは、親友を通してある一家を警護するボディーガードの仕事を請け負った。

クリーシーはその家の娘・ピタと出会い、交流を深めるのだったが…。

マイ・ボディガードの出演陣

役者 役名
デンゼル・ワシントン クリーシー
ダコタ・ファニング ピタ
ラダ・ミッチェル リサ
クリストファー・ウォーケン ポート
マーク・アンソニー サミュエル など

感想

良い意味でハリウッド的なリメイク

小説『燃える男(Man On Fire)』を原作とする実写化、の第二弾。

今作は1987年にスコット・グレン主演で映画化された『Man On Fire』のリメイク版になっており、トニー・スコット×デンゼル・ワシントンのタッグが”21世紀の燃える男”を作ることに挑戦した一作。

オリジナル版との違いは、より娯楽色が強くなっている点。

“ハリウッド的なリメイク”と言えばそれまでだが、今作はオリジナル版と比べると悲惨な部分はカットし、復讐劇は強調した作風になっているので、観ていてスカッとする作品になっている。

具体的には、オリジナル版ではサム(リメイク版ではピタ)に対する暴力がキツめに描かれていたが、リメイク版の今作では誘拐された事実のみに抑えられている。

逆にオリジナル版では抑えられていたクリーシーの暴力性は、リメイク版の今作では妥協することなく映し出しており、暴力性や残虐性という面では今作の方が上だったりする。

言わばリメイク版である今作は、子供への危害を必要最低限に抑えつつ、一方で誘拐犯に対しては前作の比ではないくらいの暴力を浴びせる作風になっている。

ロリコン要素を排除、純粋な友情に

オリジナル版のクリーシーとサム(リメイク版ではピタ)の関係性は、大人の男と少女のラブロマンス的な気持ち悪さがあり、そのままを受け止めることができなかった。

その点、今作は大人と子供という線引がきちんとある。

なので、クリーシーとピタの友情は純粋で微笑ましく、自殺の衝動に駆られるほど心に傷を負った男が、少女・ピタと交流する中で生きる希望を見出していく流れも感動的だった。

非常に痛快な復讐劇

開始50分ほどはヒューマン・ドラマ的。

この50分の間に主人公・クリーシーと少女・ピタの関係性をじっくり描き、後半の復讐劇のベースを確実に固めていく。

最初は”仕事だと割り切り、ピタを拒絶していた”クリーシーだったが、水泳をきっかけにピタと絆を深めてゆき、その結果として以前の自分と決別し、新たな人生を歩んで行こうとする。

ポール曰く「(ピタはクリーシーに)新しい命を与えてくれた」

“マイ・ボディガードを観ている”ということを忘れるほど、前半は一つのヒューマン・ドラマとして二人の人物描写に時間が割かれており、「このまま終わって欲しい…」と切に願ったほど。

ピタが誘拐され、クリーシーの復讐劇が始まる。

一連のシーンでのクリーシーは絶対的な強者であり、誰にも邪魔されずにピタを誘拐した連中を次々と消してゆき、観ている者は復讐のカタルシスに酔いしれる。

“死の芸術家”と呼ばれるように、単に銃で撃って終わりではなく、あの手この手で誘拐犯を痛めつける辺りもポイントが高い。

また、失うものがないクリーシーはもはや無敵であり─

汚職警官「オレを誰だか知ってるのか!」
クリーシー「エルマンダーの一員だろ?」
汚職警官「そうだ…」

というように組織を盾にする連中も怖くなく、相手がそれを悟った時の表情も痛快。

「”復讐”は冷たいほどうまい食事になる」とクリーシー自身が言うように、復讐劇にしっかりウェイトが置かれており、十分すぎるほど誘拐犯たちを叩いてくれるので爽快。

エンディング(ラスト)も味わい深い

「神は俺たちがしたことを赦してくれるかな」とクリーシーが言い、相手は「それはない」と答える。

拳銃で自殺しようとするもそれさえ許されなかったクリーシーが、ピタによって新しい命が与えられ、その命をピタを救うために使い果たし、最後に”ようやく死に迎えられる”というエンディング。

一見するとハッピーエンドではないけれど、「俺も家に帰る」とピタに言ったクリーシーにとってはハッピーエンドだったのかも知れない。

別(没)エンディングの存在

実は別エンディングが存在する。

別エンディングでは、クリーシーは車の中では死なずに”ボイス”の邸宅まで生きてたどり着く。

少しボイスと会話した後、クリーシーは体内に仕込んでいた(恐らくケツ爆弾)を起爆させ、ボイスもろとも爆死する…。

まとめ

復讐系アクション映画の傑作。

トニー・スコットの個性が極まった映像や、繊細な男を演じるデンゼル・ワシントンと、天才子役ダコタ・ファニングの演技合戦も素晴らしかった。

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