原題 | DE SURPRISE |
公開日 | 2015年5月21日 |
ストーリー | 父が亡くなって以降、一切の感情を失ってしまった主人公・ヤーコブ。
母も亡くなり、ヤーコブは遂に自分の人生も終えることに。 ヤーコブは様々な方法で命を終えようとするが、どの方法も何らかの形で失敗してしまう。 ある時、ヤーコブは車椅子に乗った老人が謎の男に押されて、断崖絶壁から転落する瞬間を目撃する。 そこでヤーコブは、”自分の最期を演出してくれる”葬儀屋の存在を知るのだった。 |
イェルン・ファン・コーニンスブルッヘ主演のコメディ・ドラマ映画『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』のレビュー。
“素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店”の感想/評価
安楽死をテーマにしたコメディ・ドラマ
ある意味、”自分の最期を自分で決められない”というのは酷な話。
「この世に生を受けた以上、天寿を全うせよ」というのは聞こえは良いが、一方で肉体的、精神的に疲弊した人に対して何のフォローにもならない。
私のように「何があっても最後の最後まで生きてやる」と思う人間もいれば、「これ以上苦しむ前に自分の命を終えたい」と思う人間もいる。
この映画の舞台であるベルギーでは安楽死は合法で、がん患者や障害に苦しむ人などが自分の選択として死を選ぶという。
映画では、さらに一歩踏み込んで「もし、最期の瞬間も選べたら?」という切り口から安楽死を描き、”これまで歩んで来た人生の終わり方を自分で決める”ことの意味を考えさせる。
また、そういう選択肢を持てることが心の余裕を生む面も描いており、主人公・ヤーコブにとっては”(死ぬのを)止めるのではなく、延ばす”と思えることに大きな差があった。
そんな“安楽死”という重いテーマをコミカルに描く。
重くならないように、説教臭くならないように工夫されており、主人公と葬儀屋の攻防やアンナとのやり取りが軽いタッチで描かれており、気楽に観られる。
一方で、緩すぎない映画でもあり、「いつ来る?いつ来る?」という緊張感だったり、二転三転するストーリーが全体を引き締めてくれる。
終盤の展開はやや残念
序盤は「最後はどうなるんだろうか」と期待させる。
しかし、種明かしされて以降は先が読める分かりやすいストーリーになってしまい、尻すぼみしていくような印象を受けた。
また、葬儀屋の統制が取れていない感じもストーリーの説得力を損なわせており、「よくあの状態で秘密が守られてきたな」と思ってしまう。
まとめ
扱うテーマの割りには、コメディ映画として楽しめた。
一つの死生観をテーマにしたストーリーは示唆に富む内容になっており、それを人間の温かさとユーモアをもって描くことで、コメディ映画に昇華させている。
私にとっては何度も見返したい映画になった。