ホアキン・フェニックス主演のクライム映画『ビューティフル・デイ』のレビュー。
紹介
ビューティフル・デイのストーリー
孤独な男と全てを失った少女。
その日、壊れた2つの心が動きだす―
元軍人のジョーは行方不明の捜索を請け負うスペシャリスト。
ある時、彼の元に舞い込んできた依頼はいつもと何かが違っていた。
依頼主は州上院議員。
愛用のハンマーを使い、ある組織に囚われた議員の娘・ニーナを救い出すが、彼女はあらゆる感情が欠落しているかのように無反応なままだ。
そして二人はニュースで、依頼主である父親が飛び降り自殺したことを知る―
引用元 – Yotube
ビューティフル・デイの出演陣
役者 | 役名 |
ホアキン・フェニックス | ジョー |
エカテリーナ・サムソノフ | ニーナ |
アレックス・マネット | ヴォット |
ジョン・ドーマン | ジョン |
ジュディス・ロバーツ | ジョーの母 など |
感想
トラウマに苦しむ男の希望の話
デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』に、ロバート・デ・ニーロ主演の『タクシードライバー』を乗っけたような世界観。
ホアキン・フェニックス演じる主人公・ジョーは冷酷な殺し屋であり、一旦依頼を受ければハンマー片手にターゲットを躊躇なく殺せる人物。
しかし、一方でPTSDのような症状に苦しむ人物でもあり、過去の辛い記憶がフラッシュバックするので、精神安定剤が手放せない状態だった。
ジョーは幼少期に父親から虐待を受けており、そのトラウマは彼の人格形成や生き方に大きな影響を及ぼし、戦地での体験やFBI時代の事件も彼の心を蝕んでいた。
この映画は、そんなジョーの葛藤と希望を描く作品だった。
ジョーはある仕事を受けたことで愛する母や友人たちを殺されるが、それは悲劇であると同時にこれまでの”しがらみ”から解放されたことを意味する。
ラストシーンで、ジョーは「行くあてがない」と言うが、別の言い方をすればそれは”どこにでもいける”ということ。
さらに、ジョーは同じく辛い経験した少女・ニーナと出会ったことで、ようやく自身の苦しみを理解してくれる、共有できる存在を得ることもできた。
(ニーナにとっても同様)
ほんと救いのないストーリーではあるけれど、最後には一筋の光が見えるお話になっており、意外にも良い余韻が残る作品だった。
タクシードライバーのよう
ジョーの、”社会から断然された世界で生きる男”という人物像だったり、誰にも理解されない心の闇を抱えている点だったりは『タクシードライバー』の主人公・トラヴィスを連想させる。
特にジョーが夜のニューヨークを車で徘徊するシーンなんてまさにそれ。
母親を水葬するシーン
殺された母を水葬するシーン。
主人公・ジョーは”ビニール袋”に包んだ母を抱えて池の中に消えていくが、ジョーの服のポケットには大きな石が何個も入っており、自分も一緒に死ぬつもりだった。
しかし、死ぬ間際に”ニーナをこままにしていけない”と感じたことで、今まで生きることに無気力だった男が、ポケットから石を取り出して必死に水面を目指してもがく。
このシーンは水に浸かって罪を洗い流す”浸礼”を意識していると思われ、池から這い上がって来たジョーの姿は、まるで生まれ変わったようだった。
愛する存在であると同時に、暗い過去を思い起こさせる存在だった母親と決別し、自分の力で生きようとするジョーの姿は非常に感動的。
【+考察】ビニール袋、数字やハンマーなど
主人公・ジョーがビニール袋を頭に被って苦しむシーンや、数字の幻覚が聞こえて来るシーンが度々登場する。
ジョーやニーナにとって、苦しい現実から逃れる方法がビニール袋や数字だった。
また、ジョーがハンマーを使う理由は父親の影響であり、ハンマーは男や力を象徴するアイテムとしてジョーの心に刻み込まれている。
まとめ
一人の憐れな男を通して、社会の暗部をえぐり出す怪作。
ジョーという複雑な人物をホアキン・フェニックスは見事に演じており、この手の役を演じさせると彼の右に出る者はいないと感じさせる作品でもある。