ベン・アフレック監督・主演のクライム映画『ザ・タウン』のレビュー。
紹介
ザ・タウンのストーリー
銀行強盗が多発する町”チャールズタウン”。
チャールズタウンで生まれ育った主人公・ダグは、この町を出て人生をやり直したいと思っていたが、過去の”しがらみ”がそれを許さない。
理想と現実の間で、ダグは苦心する。
ザ・タウンの出演陣
役者 | 役名 |
ベン・アフレック | ダグ |
レベッカ・ホール | クレア |
ジョン・ハム | フローリー |
ジェレミー・レナー | ジェム |
ブレイク・ライブリー | クリスタ |
感想
地元が全て
チャールズタウン…。
主人公・タグの地元であるこの町は、まるで”学生時代の上下関係が死ぬまで続くような狭い世界”であり、かつ治安も悪いので周辺の人たちも「ああ、あそこね…」という感じです。
また、「チャールズタウン」の住民は排他的で、よそ者を小馬鹿にしたりもするので、新参者にとって非常に住みにくい町でもあります。
言わば、「チャールズタウン」は出ていく者は多いが、入って来る者は少ない町になっており、必然的に住民同士の結束や繋がりは強くなります。
そして、ダグは父親を通して生まれる前から「チャールズタウン」の裏社会と接点を持ち、今はギャングの手先として強盗を繰り返して生計を立てているアウトローでした。
当然、「チャールズタウン」にどっぷり浸かっていたダグが簡単に抜け出せるわけがありません。
最終的にダグ自身は地元を離れることに成功するわけですが、それまでに相当の代償を払わされており、“しがらみ”を断つことの難しさをまざまざと見せつけられます。
親友を失い、恋人とも一生会えず、父親の面会にも行けない…。
結局、「チャールズタウン」を離れることはできたものの、ダグの心はまだあっちに残っていますし、完全に自由になれたわけでもありません。
この映画では、生まれた時点で人生が決まってしまう不条理さと、いくら地元から離れても死ぬまでその”しがらみ”に苦しめられる事実を丹念に描いています。
エンディングが味わい深い
結局、クレアも「チャールズタウン」に染まってしまったという。
彼女はダグの盗んだカネを慈善事業に使うわけですが、この”理屈をこねて犯罪を正当化する”点は「チャールズタウン」の人たちと同じなんですよね。
「チャールズタウン」の住民に”よそ者”と言われていた彼女も、最後にはこの町に染まってコミュニティの一員になってしまった、という味わい深いエンディングです。
【ヒート的?】アクションシーンは見応えあり
マイケル・マン監督の『ヒート』的な強盗、銃撃戦、逃走シーンは見応えがありました。
ジェレミー・レナー演じるジェムのキレ役が良いアクセントになっています。
【+考察】飛行機の意味
この映画では、飛行機が”自由”のメタファーとして描かれています。
クレアが解放された時や、ダグが生き方を改めようと決心する時など。
個人的に印象的だったのは、ダグが飛行機を見上げた次の瞬間にジェムが登場し、ダグが現実に引き戻されるシーンです。
「お前は逃さないと」という強いメッセージを感じました。
まとめ
メッセージ性の強いクライム映画でした。
同時にベン・アフレックの監督としての才覚を感じさせる一作になっており、ボストンの冷たい空気感と「チャールズタウン」の閉塞感を見事に捉えた映像が印象に残りました。