スティーブ・カレル主演のヒューマン・ドラマ。
また、『ブレイキング・バッド』のブライアン・クランストンと、「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーンも助演している。
紹介
30年後の同窓会のストーリー
かつてベトナム戦争に従軍し、痛みを分かち合った気の置けない仲間たち。
30年前に起きた事件をきっかけに大きく人生が変わった三人。
すっかり酸いも甘いも噛み分けた大人となり、それぞれの道を歩む旧友にして悪友の三人組は、仲間に起きた悲劇をきっかけに、海の向こうでイラク戦争が行われている時代に30年ぶりの再会を果たし、親友の息子の遺体を連れ帰る旅に出る。
引用元 – 映画『30年後の同窓会』公式サイト
30年後の同窓会の出演者
出演者 | 役名 |
スティーブ・カレル | ドク |
ブライアン・クランストン | サル |
ローレンス・フィッシュバーン | リチャード |
J・クイントン・ジョンソン | ワシントン |
ディアナ・リード・フォスター など | ルース |
情報元>>>IMDb
感想
戦友との同窓会
「同窓会」にはどこかポジティブなイメージがありますが、ドク(スティーブ・カレル)、サル(ブライアン・クランストン)、リチャード(ローレンス・フィッシュバーン)の繋がりが「ベトナム戦争」ということで、この映画の場合はどこか暗い。
また、3人が集結した一番の理由が”ドクの息子の戦死”ということで、やはりどこか暗さを感じるトーンになっています。
「私の暗黒時代の使者だ」
これはリチャードが妻にドク、サルを説明した際の言葉。
数十年の時を経て、それぞれの人生を歩み、それぞれの生活を営みながらも「ベトナム戦争」は彼らの人生に影を落とす出来事として記憶されていることが明かされます。
ドクは”ある事件”が原因で数年を無駄にし、サルはあの戦争で人生を狂わされたと感じ、リチャードは当時の荒れ狂った自分自身を恥じていました。
さらに、サルやリチャードは上記の”ある事件”において「ドクが罪を被ってくれた」ことに対して負い目を感じていました。
- ベトナム戦争で繋がった3人の中年男たち
- 息子の戦死によって再会した
- それぞれが暗い過去を持っている
ドクたちにとってこの「同窓会」はお互いに”本当の姿を知る”者同士が集まり、過去を懐かしむ時間である一方で、長年見ないフリをしてきた過去と向き合う時間でもありました。
ドラマチックな展開や大どんでん返しは存在しませんが、複雑な過去を持った中年男たちの交流や葛藤を丹念に描いており、何気ない一言や表情でしっかり魅せてくれます。
俺たちは何のために戦ったのか
この映画は2003年の冬が舞台。
当時、アメリカはイラク戦争の真っ只中で、ドクの息子を始め多くの若い兵士たちが戦場に送られており、サルはそんな彼らと「ベトナム戦争」に従軍した自分たちを重ね合わせる。
20代を捧げた「ベトナム戦争」を回想し、「あの戦争の目的はなんだったんだろうか」と考え、払った代償とそれに見合わない現実に折り合いを付けられない。
決して”説教臭く”ないけれど、主人公たちの何気ない一言や思い出話が個々人にとっての「戦争」を映し出す映画になっています。
嘘も方便?
「嘘も方便」とでも言うのか。
ドクは軍から”息子は作戦中に戦死した英雄”と説明を受けましたが、後に”作戦外の時に戦死した”という事実を明かされる。
この件でドクの軍への不信感は頂点に達し、彼は「アーリントン国立墓地」ではなく、自宅近くの墓地に息子を埋葬すると決め、棺も自分たちの手で移送すると決める。
確かに、軍のウソは確かにドクにとっては”辛い仕打ち”でしたが、一方でそのウソに救われた人もいました。
映画の終盤、ドク、サル、リチャードの3人は「ベトナム戦争」での出来事を精算するために、ある人物のもとを訪れますが、その場面で先ほどの”ウソ”が利いて来ます。
その場面はこの映画を象徴するシーンとなっており、主人公らの人生にとっての転機となる出来事として描かれます。
まとめ
この映画は一日一日を積み重ねて来た大人たちが送るヒューマン・ドラマ。
それぞれが忘れようとしていた暗い過去と真摯に向き合う姿と、その過程で再び強くなる結束・友情を淡々と描き、鑑賞後はしっとりとした感動に包まれる作品。
ただ、あの時代を生き、当事者のアメリカ人として過ごした人と、私のように「ベトナム戦争」をリアルタイムで体験せず、かつ日本人(=アメリカ人ではない)だとまた感じ方が違うのだろうとは思います。
ちなみに、この映画には実質的な前作『さらば冬のかもめ(1973年)』があるようですが、観なくても特に問題はありませんでした。