原題 | Can You Ever Forgive Me? |
公開日 | 2018年10月19日 |
ストーリー | 落ち目の伝記作家、リー・イスラエル。
ある日、リーはキャサリン・ヘプバーンの手紙を偶然発見し、それが高額で取引されていることを知る。 リーは自身の作家としての能力を活かし、有名人の手紙を次々と偽造し、それらを売ることで大金を得る。 しかし、リーの行為は愛好家たちの注意を引くことに…。 |
メリッサ・マッカーシー主演のクライム映画『ある女流作家の罪と罰』のレビュー。
ある女流作家の罪と罰の感想/評価
実はサクセス・ストーリー?
端的に言えば、”落ち目の作家が生活苦から有名人の手紙を偽造し、それを売りさばいて大金を騙し取りました”というお話でした。
が、オチを考えるとある種のサクセス・ストーリーでもありました。
主人公・リーは”元”売れっ子の伝記作家。
本人の性格や「伝記作家は前に出るべきではない」というポリシーのせいで、発行部数とは対照的にリー本人の名前はあまり売れず、落ち目となった今ではそれが足枷となっていました。
結局、創作活動は生活にゆとりがあってこそであり、それを失ったリーは”本を書かないと生活できないが、その本が書けない”という負のスパイラルに陥ってしまいます。
その窮地を救ったのはキャサリン・ヘプバーンが遺した一通の手紙。
その手紙が意外にも高値で売れたことで、リーは”有名人の手紙はお金になる”という事実を知り、かつ手紙は簡単に偽装できることも知ってしまう。
- リーの伝記作家としての実力×有名人の知名度
によって、リーの手紙は高く評価され、次々と売れる。
作家としての再起を目論んでいたリーは、皮肉にもこれまでと同じように”他人の人生を文章にする”ことで再起し、その筋では売れっ子の作家になるわけです。
当然、こうした日々は長くは続きません。
“手紙は偽装だと見破った”愛好家たちの通報を受けたFBIが捜査に乗り出し、リーは文書偽造の罪であえなく逮捕されてしまう。
しかし、リーにとってピンチはチャンスでした。
弁護士はリーに「懲役刑は免れない」と忠告しますが、法廷でリーが語った”自分で紡いだ”言葉は裁判長の心を動かし、想定されたものより軽い罪が宣告されます。
そして、“他人の人生を書く”ことしか出来なかったリーは、一連の出来事を自叙伝”Can You Ever Forgive Me?”として出版し、高く評価され、映画化もされる。
さらに、彼女が偽装した手紙も”リー・イスラエルが偽装した手紙”として価値を生むことになります。
終わってみれば、クライム映画であると同時に”リー・イスラエルという作家が犯罪に手を染め、結果的に成功を収める”様子を描いたサクセス・ストーリーでした。
この映画ではリーの人物像を深く掘り下げ、個々の出来事を丁寧に映し出すことで、そんな特殊なサクセス・ストーリーが説得力をもって描かれており、かつリーのガサツながらも繊細な人柄もうかがい知ることができます。
主要人物を演じる二人が好演
私の中では”メリッサ・マッカーシーはコメディ畑の人”というイメージでしたが、この映画ではガサツながらも繊細な心を持った人物を好演しています。
中でも”本屋を営む友人の悩みを知って自身のやっていることに罪悪感を覚える”シーンでの演技は特に印象に残っています。
また、リチャード・E・グラントの気品とユーモア溢れる演技も素晴らしく、メリッサ・マッカーシー演じるリーとの対比にもなっています。
まとめ
ある犯罪と、ある成功を丁寧に描いた一作でした。
リー・イスラエル演じるメリッサ・マッカーシーとジャック演じるリチャード・E・グラントの演技が光る一作になっており、リーの波乱万丈な人生を描いたストーリーも見応えがありました。