ロバート・デ・ニーロ主演のクライム映画『カジノ』のレビュー。
紹介
カジノのストーリー
ラスベガスの有名カジノ【タンジール】の支配人・エース。
順風満帆に見えた彼の人生だったが、あることをきっかけに脆くも崩れ去っていくことに。
カジノの出演陣
役者 | 役名 |
ロバート・デ・ニーロ | エース |
シャロン・ストーン | ジンジャー |
ジョー・ペシ | ニッキー |
ジェームズ・ウッズ | レスター |
ドン・リックルズ | ビリー |
感想
ラスベガスの魔法が招く破滅劇
『グッドフェローズ(90)』から5年。
再び、マーティン・スコセッシのもとにロバート・デ・ニーロやジョー・ペシが結集して製作された本作では、その名の通り、ラスベガスの”カジノ”を舞台にした骨太ストーリーが描かれる。
シカゴで有能なノミ屋として名を挙げた主人公・エースは、ラスベガスのカジノ【タンジール】の支配人となり、”ロススティーンさん”として大成功を収める。
この映画の開始1時間は、そんなエースと相棒・ニッキーの語りを通して”カジノ”の裏側やラスベガスの掟を克明に映し出し、カジノ周辺の出来事を説得力をもって観客に伝える。
続いて映画中盤では、【タンジール】を大成功に導いたエースと、ニッキーを始めとしたカジノ運営に一枚噛むギャングたちを中心に、“ラスベガスの魔法”に大勢の人間が魅了された様子が描かれる。
しかし、ここで終わらないのがマーティン・スコセッシ映画。
エースが恋人・ジンジャーと結婚し、ニッキーがラスベガスに移住して来たことを機に、『グッドフェローズ』さながらの破滅劇が始まる。
全てをコントロールしたいエースと、自由奔放に生きたいジンジャーが上手く行くはずがなく、案の定、二人の結婚生活は早い段階から雲行きが怪しくなる。
また、ニッキーのカッとなる性格は”秩序の維持”を重視するラスベガスの土地柄とは正反対であり、ニッキーの数々の言動がエースの立場を危うくする。
そして、金の切れ目が縁の切れ目。
諸々の混乱で【タンジール】からの上納金が減り始めると、”出資者”のマフィアのボスたちはエースやニッキーたちを不満分子として見るようになり、締め付けを厳しくする。
一方で、ニッキーの暴走によって【タンジール】は捜査当局に注目されるカジノになってしまい、豪華絢爛なカジノも、実態は”砂上の楼閣”だったことが分かって来る。
ひとたび崩壊が始めるともう止められない。
マーティン・スコセッシはその様子を『グッドフェローズ』よりもストイックに描き、かつニッキーのような男さえも飲み込む”ラスベガスという土地”と、人々を魅了してやまないラスベガスの魔法の真実も同時に描く。
ジンジャーが恐ろしい
ジンジャーとかいう恐ろしい女。
彼女の本質は”ハスラー”であり、相手から一枚でも多くのコインをせしめることで生き延びて来た女なので、常に”勝てる”側にいようとする。
そして、勝ちを作る能力にも長けている。
“リスクは絶対に避ける”エースを結婚という賭けに乗せたり、エースとの関係が切れると今後は彼の親友と寝ることで有効なカードを得ようとしたりする。
結局、勝ちへの執着がジンジャーの破滅を招くが、この執着心はギャングの凶暴性とは違う意味で恐ろしい存在だった。
意外にも実話部分が多い
主人公・エースはフランク・ローゼンタール、相棒・ニッキーはトニー・スピロトロ、妻・ジンジャーはジェリー・マクギーをモデルにしている。
また、映画での出来事も実話に着想を得ているよう。
具体的には、フランク・ローゼンタールは本当に爆破事件を生き延びているし、カジノのライセンスも持っていなかった。
ニッキーやジンジャーの最期も同様。
登場人物の比較
映画 | 現実 |
引用元 – Casino Movie True Story
アイリッシュマンとの繋がり
【タンジール】のモデルとなったカジノ【スターダスト】は、全米トラック運転組合の委員長、ジミー・ホッファが牛耳る年金基金から出資を受けて経営されていた。
2019年に公開されたマーティン・スコセッシ監督の『アイリッシュマン』は、このジミー・ホッファを中心にしたギャング映画になっている。
なお、同作にはロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシやアル・パチーノが出演。
まとめ
カジノに人生を弄ばれた人たちの破滅劇を描いた強烈な一作。
ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシやシャロン・ストーンが織りなすストーリーは面白く、きらびやかなラスベガスもマーティン・スコセッシの手に掛かれば本当の姿が見えて来る。
なお、現在は『アイリッシュマン』とセットで観るとより楽しめるはず。