ジェシカ・チャステイン主演の社会派サスペンス映画『ゼロ・ダーク・サーティ』のレビュー。
紹介
ゼロ・ダーク・サーティのストーリー
華奢で青白く澄んだ瞳が印象的な20代半ばの女性・マヤ。
とてもCIA分析官には見えないが、情報収集と分析に天才的な感覚を持ち、一向に手掛かりをつかめないビンラディン捜索チームに抜擢される。
捜査は困難を極め、ある日、同僚が自爆テロに巻き込まれて死んでしまう。
その日を境に、狂気をはらんだ執念でターゲットの居場所を絞り込んでいくマヤ。
ついにマヤは隠れ家を発見するのだが、果たして国家が下す決断とは――。
引用元 – Youtube
ゼロ・ダーク・サーティの出演陣
役者 | 役名 |
ジェシカ・チャステイン | マヤ |
ジェイソン・クラーク | ダン |
ジェニファー・イーリー | ジェシカ |
マーク・ストロング | ジョージ |
カイル・チャンドラー | ジョゼフ など |
感想
良くも悪くもアメリカ視点
CIAがウサーマ・ビン・ラーディンを発見し、米軍が殺害するまでの出来事を『ハート・ロッカー』の監督、キャスリン・ビグローが描いた一作。
ストーリーは、ジェシカ・チャステイン演じる主人公・マヤがCIAパキスタン支局に配属され、そこで「アメリカ同時多発テロ事件」で重要な役割を果たしたアマールという男を尋問しているところから始まります。
冒頭のCIAがアマールを尋問する一連のシーンでは、国内外から批判を浴びたCIAの”激しい”尋問をまざまざと見せつけ、この作戦の負の側面を映し出します。
「おお、ちゃんと負の側面も描く映画なのか」と期待しました。
しかし、残念ながらそれは冒頭だけでした。
さすがに”製作に協力してくれた”米政府とCIAを痛烈に批判することはできなかったようで、序盤以降はどこを切り取ってもアメリカ的なストーリーになっています。
“激しい”尋問に関しても「止めたほうが良いけど、効果はあるよね」程度であり、人権無視、人種差別や主権侵害についての指摘はありません。
当然、「アメリカ同時多発テロ事件」は許されないテロ事件です。
しかし、一方でテロリストにもテロリストなりの理屈があるわけで、それを無視してしまうのは史実ベースの映画としては乱暴なのではと思いました。
CIAへの批判やテロリスト側の理屈なども史実の一部なのですから。
確かに、この映画は賞レース受けが良さそうな作品ではありますが、あまりにアメリカ的なので中盤以降は胸焼け気味でした。
ただし、ターゲットは仕留めたけれど手放しに喜べない現実を淡々と映し出すエンディングは非常に良かったですが。
長くてダレる
この映画は2時間半ほどあります。
正直、最初の30分とクライマックスの襲撃シーンを除けば、これと言った話は描かれていませんでした。
(おそらく)現実的な情報収集やCIA内部の根回しなどは、史実ベースの映画ならではの説得力があるのですが、それがグダグダと続くので中だるみしています。
まとめ
正直、イマイチな映画でした。
やけに長くてダレダレですし、出来事の一面ばかり強調している点も史実ベースの作品としては乱暴に感じました。
嫌味ではなく、「HBO辺りでテレビドラマ化した方が良かったのでは?」と思います。
ただ、ジェシカ・チャステインの演技はこの映画でも際立っていました。