【感想・評価】『ニュースの真相(ネタバレ)』レビュー

社会派映画のレビュー

ケイト・ブランシェット主演の社会派映画『ニュースの真相』のレビュー。

紹介

ニュースの真相のストーリー

ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープしたCBSの名物報道番組「60 Minutes II」。

しかし、それの根拠となったメモに偽造された可能性が浮上し、プロデューサーのメアリーと、それを報じたアンカーのダンは窮地に陥る…。

ニュースの真相の出演陣

役者 役名
ケイト・ブランシェット メアリー
ロバート・レッドフォード ダン
トファー・グレイス マイク
デニス・クエイド ロジャー
エリザベス・モス ルーシー など

感想

誤報の背景を描く

確かに”誤報”に関しては、主人公・メアリーに大きな責任があります。

“誤報”の背景には、メアリー自身が”ブッシュの軍歴詐称疑惑”について疑念を抱かなかったことや、「報道番組として数字を残したい」「選挙戦の間にこのネタを報道したい」などの個人的な事情が絡んでおり、ストーリーありきの報道だった感は否めません。

(映画によれば、調査委員会は”番組に政治的偏向はない”と結論付けたようですが)

一方で、視聴者が骨太な報道番組に関心がない現状と、それによって報道番組の立場が危うくなっている現実も描いており、そうした危機意識が誤報の背景にあることを示唆します。

中盤、”ブッシュの軍歴詐称疑惑”という大スクープさえも、リアリティショーに放送枠を取られてしまって自由に報道できない様子が描かれます。

ロバート・レッドフォード演じるダン・ラザーは「国は”国民のために使うこと”を条件に、放送局に電波の使用を許可した」と話し、報道番組にも収益性を求める昨今の風潮を憂います。

確かに、一連のスキャンダルはメモの裏付けが不十分だったメアリーに原因があるわけですが、その背景には報道番組を取り囲む厳しい現実がありました。

この映画では、”ブッシュの軍歴詐称疑惑”という切り口から、報道番組が直面する問題を描いており、非常に見応えがありました。

問題の本質を見えなくする

  • ブッシュの軍歴詐称疑惑
  • メモが偽物だった件

本来なら、この2つは切り離して考えるべきですが、最終的にブッシュの軍歴詐称疑惑は”CBSの誤報”に上書きされてしまい、誰も追及しなくなります。

保守系ブロガーからすればメアリーは格好の獲物ですし、ライバル局からすれば名物番組を葬り去れる絶好の機会なわけで、軍歴詐称疑惑を追うよりも旨味がありました。

常識的に考えれば、パパ・ブッシュの息子を優遇することで貸しを作りたい人間や、顔色を伺って”忖度”する人間はいるはずで、特別待遇された可能性は排除できません。

また、メアリーも指摘していますが、メモには当時の軍内部の様子が克明に描かれており、この線を追う価値も十分にあります。

しかし、世間の注目は”CBSの誤報”に集まってしまい、誰も問題の本質を見ようとしないまま選挙戦は終わってしまいます。

日本でも、いつの間にか本筋から外れて小さな問題で紛糾している時が多々ありますし、決して他人事とは思えません。

この映画では”情報を受け取る側の姿勢”も問うており、「誰がどの立場から言っているのか」「問題の本質はどこなのか?」と考える大切さを描きます。

まとめ

非常に重みのある社会派映画でした。

報道番組の裏側とそれを取り囲む状況は興味深く、問題の本質を見極める重要性を説くテーマも見応えがありました。