原題 | Widows |
公開日 | 2018年11月6日 |
ストーリー | 強盗犯の夫を亡くした女たち。
ヴェロニカ、リンダ、アリスの3人は、ギャングに”夫たちが盗んだ大金を全額返す”ように脅迫される。 その後、ヴェロニカは夫が遺した”強盗計画が記された”手帳を発見し、その作戦を実行に移そうと画策する。 結果的に、ヴェロニカはリンダ、アリス、ベルと共に強盗計画を実行するのだった。 |
ヴィオラ・デイヴィス主演のクライム・ドラマ映画『ロスト・マネー 偽りの報酬』のレビュー。
ロスト・マネー 偽りの報酬の感想/評価
この映画は”悲しみの5段階”がテーマなのかなと。
最愛の人を亡くし、金銭的にも精神的にも苦しい立場に追いやられた未亡人たち(Widows<=原題)が、”夫と同じように強盗を働く”中で悲劇を受け入れていく。
冒頭、主人公たちはパートナーの死に打ちのめされるわけだけれど、全てが終わったあとは一区切り付き、前向きにそれぞれの人生を歩もうとしている。
ストーリーでは、そうした“悲劇を受け入れるプロセス”をベースに、腐敗した政治、マイノリティへの偏見や女性蔑視など、現代社会の問題点を指摘する要素も取り入れている。
議員の顔は変わっても根は腐ったままという現実だったり、白人と比べてマイナスをゼロに戻すことさえ難しいほど格差が広がっている事実だったりを克明に描いており、社会を覆う閉塞感が伝わって来る。
ヴェロニカの息子が射殺されるシーンでは、壁にオバマのポスターが貼られているが、黒人大統領の誕生に湧く一方で、それでも変わらないシビアな現実を感じさせる。
個人的に、銃社会への問題提起が印象に残っており、子連れで銃を買いに来る母親やアリスのようなフワフワした人間でも、簡単に銃を調達できる”アメリカ”に改めて驚かされた。
結局、ヴェロニカの息子が警官に射殺された一件も、銃が身近にあることが一因で、ダッシュボードに手を伸ばした瞬間に射殺されるなんて、銃社会以外ではあり得ない。
クライマックスの強盗シーンは迫力満点で、スマートに目的を達成する様子をスリリングに描いており、山場として申し分ない出来栄えだった。
まとめ
良質なクライム風味のヒューマン・ドラマだった。
悲劇を乗り越える様子を丹念に描いた力強い一作でもあり、現代社会への問題提起を含んだ社会派な一作でもあり、非常に見応えがあった。
出演者もやけに豪華で、そうした面でも楽しめた。