リチャード・ギア主演の社会派映画『ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度』のレビュー。
ちなみに、スティーブ・ブシェミやキーラ・セジウィックなどの有名俳優がチラッと出演しています。
紹介
ロスト・イン・マンハッタンのストーリー
ロスト・イン・マンハッタンの出演陣
役者 | 役名 |
リチャード・ギア | ジョージ |
ベン・ヴェリーン | ディクソン |
ジェナ・マローン | マギー |
キーラ・セジウィック | カレン |
スティーブ・ブシェミ | アート など |
感想
【ある意味、実話】本物ならではのリアリティ
この映画ではリチャード・ギア演じるホームレス、ジョージを通して”私たち”の無関心さと残酷さを描き、「見えないふりはやめよう」「少しでも関心を持とう」というメッセージを訴えかけます。
驚いたことに、この映画の一部シーンは”ホームレスに扮したリチャード・ギアがそのまま街に繰り出して”撮影されたもの*ということで、人々の無関心さは作り物ではありません。
人通りの多い歩道で募金を募るジョージの横を、まるで見えないかのように人々が通り過ぎていくシーンも、作り物ではないわけです。
町中での撮影にあたり、リチャード・ギアは”正体がバレてしまって撮影が中断すること”を警戒したそうですが、数千人のうち彼だと気づいたのは数名程度だったそうです。
リチャード・ギア自身はホームレスのシェルターを守る活動をしているそうですが、そんな彼だからこそ作れた映画のように思います。
ホームレスの置かれた立場を理解している人が作った映画だからこそ、劇中の「俺は誰にも迷惑を掛けていない!」「まるで透明人間のようだ!」という台詞はずっしりと重い。
あと、この映画ではリチャード・ギア演じるジョージをガラス越しやドア越しから撮影していることが多いのですが、それは向こう側とこちら側の隔たりを表現しているようでした。
結局、この映画の登場人物たちのように誰でもホームレスになる可能性はあるわけなので、見て見ぬ振りをすることは回り回って自分の首を締めることに繋がります。
セーフティーネットからこぼれ落ちる人々
この点は、同じく社会への問題提起が込められた映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』でも描かれていましたが、実際に支援を受けるまでの道のりが長い。
当然、公的な支援を受ける場合はいくつかの書類を提出する必要があるわけですが、ホームレスの多くはそれを簡単に用意できません。
ジョージも、支援を受けるためには社会保障番号が必要だと言われ、それの再発行をお願いした際には出生証明書が必要だと言われ、それの再発行にも運転免許証などの身分証が必要だと言われてたらい回しにされます。
セーフティーネットにすら引っかからない人がいる現実も、この映画では淡々と描いています。
スローテンポすぎる
“リチャード・ギアがホームレスに扮して町中で撮影している”ことを知らない場合、映画の前半は非常に退屈させられるはずです。
というのも、ストーリーが進み出すのが開始50分辺りからなので。
逆に”リチャード・ギアがホームレスに扮して町中で撮影している”ことを知っていれば、一つのドキュメンタリー映像として楽しめるのですが。
まとめ
ドシッと重い社会派映画でした。
映画自体は前向きな結末を予感させるものでしたが、ホームレスの問題は依然として残っているわけで、この映画を観た上で「何ができるのか?」を考えさせる作品でした。