トム・ハーディ主演『クライム・ヒート』のレビュー。
紹介
クライム・ヒートのストーリー
ブルックリンでバーを装ってマフィアの金を預かる“闇銀行”を営むボブとマーヴ。
ある日、2人の仮面をかぶった強盗が店を襲い、絶対に奪われてはいけない大金が盗まれてしまう。
街で最も危険なマフィアに、金を取り返すように命じられた彼らは、ダークサイドへと足を踏み入れていくが……。
引用元 – Youtubeより
クライム・ヒートの出演陣
役者 | 役名 |
トム・ハーディ | ボブ |
ノオミ・ラパス | ナディア |
ジェームズ・ガンドルフィーニ | マーヴ |
マティアス・スーナールツ | エリック |
ジョン・オーティス | トーレス刑事 |
感想
狭い世界で生きる人たちを描く
ブルックリンの、それもチェチェン人のギャングが牛耳る一画という狭い世界。
しかし、ボブやマーヴにとってはその世界が全てであり、バーを切り盛りし、売上をギャングに収め、一日一日を生き抜くことしか生きる術を知らない。
この映画では閉塞感漂うブルックリンのどこかを舞台に、ギャングによる容赦ない締め付けと、”一度食い物にされたやつは死ぬまでそのまま”という非情な現実を淡々と描く。
主人公・ボブの従兄弟マーヴは、昔は地元では一目置かれたギャングだったが、今ではチェチェン人の使い捨てのコマに過ぎず、自分のバーも彼らに奪われてしまう。
そんなマーヴは、自分の店を手下に襲わせてギャングのカネを奪うという奇策に打って出るが、組織化されたチェチェン人ギャングと、落ち目の元ヤンでは結果は火を見るより明らか。
上手く行きそうにない計画を進めるマーヴの行く末と、かと言って現状を打破する方法もないという八方塞がり感が生々しく、暗くて、冷たくて、重々しい空気感が作品全体を覆う。
寡黙な主人公と狂気性
トム・ハーディ演じる主人公・ボブ。
彼の周りには粗暴な人間が数多くいるけれど、ボブ自身は寡黙で、周囲はそんな彼を少し下に見たり、イジりの対象にしていた。
しかし、すぐに「コイツ、只者じゃないぞ」と分かる。
強盗に襲われた際は一切動じることなく、犯人の特徴をきっちり記憶するし、”血まみれの紙幣と片腕が入った”ゴミ袋を見つけた時も一切動じず、まるでハムを包むように片腕を処理する…。
ボブは決して声を張り上げたり、相手を罵ったりしないけれど、彼の奥底では異常とも言える狂気性が眠っており、冷静に物事を処理していく姿が恐ろしい。
そして、彼の奥底に眠る狂気性が炸裂するラストの展開は秀逸。
ハッタリの狂気が本物に喰われる様を、最低限の言葉とボブの表情だけで描ききっており、空気が一変し、主人公が場を支配する流れは何度見ても見入ってしまう。
この映画が遺作となったジェームズ・ガンドルフィーニ同様に、トム・ハーディも素晴らしい。
まとめ
狭い世界でしか生きられない者たちの”もがき”をスリリングに描いた一作。
狭い世界での過酷な生存競争を、最低限の台詞と卓越した演技力で魅せてくれる作品になっており、トム・ハーディ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ノオミ・ラパスらの演技合戦も見応え十分。