【感想・評価】『8mm(ネタバレ)』レビュー

ミステリー映画のレビュー

ニコラス・ケイジ主演『8mm』のレビュー。

若い頃のホアキン・フェニックスやノーマン・リーダスも出演している。

紹介

8mmのストーリー

私立探偵のトム・ウェルズが、富豪の未亡人に見せられた1本の8mmフィルム。

夫の遺品に含まれていたというそのフィルムには、ショッキングな少女の殺害シーンが映っていた。

この映像の真偽を確かめて欲しいと依頼されたウェルズは、少女の足跡を追う内に、性のアンダーワールドへと導かれていく。

そこで彼が目にしたのは、究極の悦楽に身を投じる人々の、恐るべき欲望が作り出した悪魔のような世界だった・・・。

引用元 – Youtubeより

8mmの出演陣

役者 役名
ニコラス・ケイジ トム
ホアキン・フェニックス マックス
ジェームズ・ガンドルフィーニ エディー
ピーター・ストーメア ディーノ
アンソニー・ヒールド ダニエル など

感想

重々しい雰囲気のミステリー

大財閥×猟奇的な殺人事件

映画『セブン』的なダーティーな世界観と、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』っぽいミステリーが融合した一作になっており、観ている者の期待感を煽る作品。

また、主人公・トムの目的が「スナッフ フィルム(殺人の様子を収めたフィルム)」の被害者を探すことなので、初っ端から「ハッピーエンドはないだろう」という諦めに近いものがあり、どんより暗い。

アメリカを舞台にしたアメリカの映画だが、北欧映画を連想させる冷たい空気感が印象的で、寂れた下町を舞台にした閉塞感もいい味を出している。

都合よく証拠が集まって来る

初めて訪れた被害者の自宅で、トイレに隠された秘密の日記をピンポイントで発見し、それをきっかけに芋づる式で次々と関係者を発見していく。

FBIでも解決できない難事件を捜査しているのに、いち探偵に過ぎない主人公が苦労して捜査していく様子がほとんど見られない。

容疑者の事務所に盗聴器を設置するのも楽々と成功させるし、刑事を偽っての情報収集もなんの苦労もなく完了!!!

情報に振り回されたり、行き詰まって苦労することがないのでミステリーとして非常に物足りない。

共感できないエンディング(ラスト)

全体的に人物描写はしっかり出来ていた。

探偵としてアングラな世界に足を踏み入れたことで、”自分自身もその闇に飲まれていく”というストーリーになっており、その点は丁寧に描けている。

ただ、闇に飲まれた後の展開が雑だった。

中盤、主人公・トムは殺人の証拠を失い、証人もいなくなってしまったことで犯人たちを告発できなくなり、目の前に悪がいても手が出せないことの不条理さを思い知らされる。

ここでグッと堪えられるからこそ、トムはこっち側の人間であり、それが犯人たちとの明確な違いだったが、主人公は一線を超える。

トムは、ピストルでエディーを撲殺の上に遺体を燃やし、ジョージを家に押し入った上で刺し殺すという凶行に出る。

まさに劇中のセリフ「悪魔と踊ると悪に染まる」をなぞる展開になっており、”不条理さが生んだ狂気が暴走する”様は素直に面白いと思った。

また、その後の”一線を超えてしまった”ことに打ちのめされ、その事実に苦しみながら人生を歩んでいくことを予感させる描き方も良かった。

それだけに、無理やりなハッピーエンドは疑問。

結局、トムは遺族からの手紙一通で救済される。

凶悪犯となり、精神的なダメージを受けたにもかかわらず、トムはその手紙を受け取ったことで”自分のやったことは赦された”と感じてしまい、なんと笑顔を見せる。

自分なりの理屈で殺人を正当化する点は、トムも犯人たちも一緒なのに映画ではこのことには触れずに、”主人公は正義を下して感謝されました”という形で無理やりハッピーエンドとしてまとめる。

非常に奇妙で、共感できないエンディング。

「セブンのパクリ」という指摘を恐れずに、”目の前に悪がいても手が下せないこともある不条理さ”を感じさせる最後や、一件落着したものの心に大きなキズを負ったトムの姿を描く最後の方が何倍も良かったのでは?と。

そもそも、最初の殺しの描写が雑

一回目の殺人の際、トムは遺族に電話して殺人を正当化しようとする。

突然、夜中に遺族に電話し、「娘さんは惨殺された」と告げ、「あなたが言うなら自分が代わりに手を下す」と言うが、観ている側としては”殺したい自分の衝動”を遺族を使って正当化しようとしているように見えてしまって、全く共感できなかった。

実は本作の脚本は映画『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーだったものの、配給元の意向を汲んだ監督によって脚本が大幅に書き換えられた模様。

個人的に合点がいく裏話。

まとめ

終わってみれば一貫性がなく、雑な映画だった。

無理に一般受けを狙ったことで作品の魅力が失われてしまい、重厚な世界観も台無しに。

前半が魅力的だっただけに非常にもったいない。