【感想・評価】『ローズの秘密の頁(ネタバレ)』レビュー

ドラマ映画のレビュー
原題 The Secret Scripture
公開日 2017年3月24日
ストーリー 40年近くもの間、ロスコモンの精神科病院に入院していた主人公、ロザンヌ・マクナルティ。

ローズは1942年に自分の赤ん坊を殺したと言われていた。

精神科病院の取り壊しに伴い、主治医はローズを転院させるべきかを判断すべく、ローズの半生を調査することに。

ルーニー・マーラ主演のドラマ映画『ローズの秘密の頁』のレビュー。

ローズの秘密の頁の感想/評価

この映画は、“40年近く精神科病院に入院していた老女が振り返る”半生を現在と過去を行き来しながら描くヒューマン・ドラマでした。

主人公・ローズは、第二次世界大戦の影響で叔母が住むアイルランドにやって来るのですが、その場所は閉鎖的で、昔ながらの風習が色濃く残っている村でした。

対して、ローズは都会からやって来た女性で、村の人間からすれば彼女はモダンな女性であり、その強く、自由奔放な人間性に村の男たちは惹かれていくわけです。

ローズ自身はこれまでと同じように生活しているだけなのに、周りの男たちが勝手に騒ぎ、嫉妬し、その様子を見ていた村人は”ローズが来たからこうなった”と思い込む。

「全てはローズのせい」にすれば、嫉妬に狂った自分たちの行動は正当化できるし、村人も自分たちの昔ながらの風習を改める必要もない。

ローズは村の風習や村人のドロドロとした感情を全て押し付けられ、戦火から逃れるためにやって来たこの土地で村八分のような扱いを受ける。

その後、マイケル・マクナルティと愛を育むもイギリスとアイルランドの対立に巻き込まれてしまい、これまで以上に苦しい立場に追いやられる。

その上、村の神父であるゴーント神父はローズに拒絶されたことを根に持ち、嫉妬に狂った果てに彼女を”色情症”として精神科病院に送り込んでしまう。

そして、マイケルは村人に殺され、ゴーント神父にはマイケルとの子供まで奪われてしまい、子供殺しの濡れ衣まで着せられる。

家族を奪われ、人生も奪われる。

ローズは20歳半ばで人生をめちゃくちゃにされたわけですが、観ている者としては「一体、彼女の人生は何だったのだろうか」と考えさせられる。

最終的に、ローズは生き別れた息子と再会し、息子を通してマイケルとも再会を果たしますが、手放しに喜ぶことはできず、失った時間と彼女が受けた仕打ちに胸が痛む。

(ゴーント神父をはじめ、逃げ切った者も多い)

けれども、悲劇的な過去と決別して一歩を踏み出すローズの姿は前向きで、息子との再会によって欠けたピースが埋まり、本当の居場所に帰っていく最後は良い余韻が残ります。

国外では原作と比べて映画版を酷評する向きもあるようですが、一つのヒューマン・ドラマとしては非常に見応えのある一作でした。

まとめ

時代に翻弄されたローズを通して人生や愛について描く一作。

理想と現実が交差する重い一作ではありますが、最後には一筋の光が差し込むお話になっており、ローズの半生をヒューマン・ドラマとして上手くまとめた良作です。