【感想・評価】『蜘蛛の巣を払う女(ネタバレ)』レビュー

アクション映画のレビュー
原題 The Girl in the Spider’s Web
公開日 2018年11月9日
ストーリー リスベットはバルデル博士に依頼され、博士が開発した人工知能をNSAから取り戻す。

しかし、リスベットの行動はスウェーデン政府、NSA、スウェーデンの裏社会をも巻き込む騒動に発展していく。

クレア・フォイ主演のサスペンス・アクション映画『蜘蛛の巣を払う女』のレビュー。

蜘蛛の巣を払う女の感想/評価

エンタメ色が強くなった

「ミレニアム」シリーズとしては『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』『ドラゴン・タトゥーの女』の次に面白い一作だった。

今回はミステリー風味のアクション映画になっているが、ハイテンポのアクションと洗練されたビジュアルは非常に印象的で、これはこれで良かった。

リスベットらしい、相手を容赦なく叩きのめす粗暴さと、テクノロジーを駆使して相手を丸め込むスマートさが見事に表現されており、コントラストの利いたビジュアルも監督の個性が光る。

過去作と比べると、今回はビジュアル的なインパクトが大きく、煙が充満する中に現れるガスマスクの男たち、白銀の世界を彷徨う赤い服の女など、印象的なシーンが多い。

また、サスペンス・ミステリーとしても面白い方だった。

良くも悪くも単純明快なストーリーになっているが、おかげでストーリーを追うことが難しくなく、一応は捻りも利いていて興味も最後まで続く。

確かに、リスベットやミカイルが地道に調査を重ねていくミステリーの部分は弱くなっているが、今回のアクション性とのバーターであれば十分許容できる。

ただし、随分とマイルドになった表現は物足りなかった。

原作小説が異なるので単純比較は出来ないが、『ドラゴン・タトゥーの女』と比べると現代/北欧社会の病巣を描くハードさが薄れており、個人的には物足りなさを覚えた。

間の二作が欲しかった

本来なら、デビッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』と今作の間には「火と戯れる女」と「眠れる女と狂卓の騎士」があったはず。

スウェーデン版では『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』の二作を使ってリスベットが過去と決別し、成長する姿が描かれた。

その点、アメリカ版の方は「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」をすっ飛ばした上で『蜘蛛の巣を払う女』が公開された。

脳内で”「火と戯れる女」「眠れる女と狂卓の騎士」はあった”とした場合は、今作のリスベットはあの凄惨な過去を生き延びたサバイバーとして好意的に受け取れるが、逆の場合は急にキャラクターが変貌したような印象を受ける。

デビッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』に加えて、間を埋める『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』の知識も必要というのは、割りと観るハードルは高いのではと。

まとめ

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』、デビッド・フィンチャー版『ドラゴン・タトゥーの女』の次に面白い「ミレニアム」だった。

アクション、サスペンスやミステリーがバランスよく取り入れられ、それらがテンポよく約2時間の映画に収まっており、非常に洗練された一作だった。

興行成績的に続編が望み薄なのが残念。