【考察】映画『メッセージ』を原作と比べて考えてみる

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映画『メッセージ』を、原作『あなたの人生の物語』を参照しながら考えてみる。

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メッセージ&あなたの人生の物語を考察

ルイーズは未来を変えられる?

(ヘプタポッドは)未来を創出するため、年代記を実演するために、行動する

引用元 – あなたの人生の物語

ヘプタポッドは未来を見ることができますが、彼らは”未来を見た”からと言って行動を変えることはせず、逆に見た未来のままに行動します。

要するに、ヘプタポッドは”年代記という台本の通りに演じている”わけです。

そもそも、「未来を知ったら別の選択をするかも」という考え方は実に人間的であり、自由意志を持つ(と考える)者ならではの発想だと言えます。

そして、原作でも映画でもルイーズはヘプタポッドの言語を習得する中で、彼らと同じ物の見方(同時的意識)ができるようになって来ます。

ヘプタポッドの言語を習得した結果、ルイーズもまたヘプタポッドと同じように”未来を現実化するために歴史の事象を演じる”ようになります。

わたしは手をのばして、棚からそのボウルをとった。

その動きは、そうすることを強いられたものとは感じられなかった。

そうではなく、ボウルがあなたの頭に落ちてくるときにそれをつかもうと躍起になるのと同じ切迫感だったと思う。

それに従うのが正しいと感じる本能のひとつだと。

引用元 – あなたの人生の物語

何年も後にそのボウル(容器)でルイーズの娘が怪我をする。

当然、ボウルを取らなければ娘は怪我をしないわけですが、ルイーズはたとえ娘が怪我をすることになっても、本能的に、切迫感に駆られて”未来の事象を演じる(ボウルを購入する)”。

未来を知っているいま、その未来に反する行動は、自分の知っていることを他者に語ることも含めて、わたしはけっしてしないだろう

引用元 – あなたの人生の物語

ヘプタポッドの言語を習得するということは、ヘプタポッドと同じ物の見方(同時的意識)をするということでもありました。

“未来は変えられるものではなく、その通りに演じるものになる”わけです。

よって、ルイーズは未来を変えられません。

アボットは死ぬことが分かっている

ヘプタポッドの年代記には”アボットが地球で死ぬ”ことも記されており、アボット自身もそれは知っている。

自分が死ぬことが分かっているアボットは、「武器」と告げるシーンではすぐに姿を見せず、遅れて登場します…。

ヘプタポッドが地球に来た理由は?

それがヘプタポッドの年代記に記されているから。

ヘプタポッドの年代記には、3000年後に自分たちが危機に瀕することが記されており、その際に人類が手助けしてくれるが、その為には3000年前に地球に来てヘプタポッドの言語を人類に与える必要があった、というわけです。

ちなみに「3000年後に何があるの?」「なんで3000年後なの?」「人類はヘプタポッドの言語をどう活用するの?」という疑問点は上記サイトが考察されています。

イアンと別れる理由

ルイーズは”娘が若くして亡くなる”ことを知っていたにもかかわらず、イアンにはそれを伝えずに娘を作り、生みます。

後にルイーズはイアンに真実を告げるわけですが、イアンはその現実に耐えきれずに関係は破綻します。

「娘を生んだ理由」「イアンに真実を話した理由」は、ルイーズの年代記にそう記されていたからであり、”未来は変えられるものではなく、その通りに演じるもの”という彼女にとってそれらを回避することはできなかったわけです。

イアンも未来を見れるのか?

少なくとも離婚した時点ではイアンは未来を見ることができない。

「パパが聞きたくないことを言ってしまったのよ」と言っているので、”未来を観たから”ではなく、ルイーズに告げられたから娘の死を知ったと考えるのが妥当でしょう。

小鳥の意味は?

シェル内の環境を確認する一種の装置として。

まとめ

以上、”【考察】映画『メッセージ』を原作との違いを含めて考える”でした。

そもそも、私たち(観客)がヘプタポッドの概念を完全に理解することは出来ないわけですが、何度も繰り返し原作を読み、映画を観ることで理解を深めることはできます。

“最初に立ち返ってもう一度注意深くみる”ことは原作/映画のストーリーと同じであり、作品の構造自体が回文をモチーフにしているかのようです。

この記事があなたが映画を理解する手助けに少しでもなれば嬉しい。

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