【感想・評価】『アメリカン・ギャングスター(ネタバレ)』レビュー

クライム映画のレビュー
原題 American Gangster
公開日 2007年11月2日
ストーリー ハーレムの裏社会を支配していたギャングの大ボスであるバンピーが亡くなる。

バンピーの後を継いだフランク・ルーカスはさらなる繁栄を求めてドラッグビジネスに力を入れる。

フランクのドラッグ「ブルーマジック」が街に蔓延る状況を何とかすべく、警察官であるリッチーはフランク帝国に戦いを挑む。

デンゼル・ワシントン主演のクライム映画『アメリカン・ギャングスター』のレビュー。

アメリカン・ギャングスターの感想/評価

ギャングスターの繁栄と凋落を描く

この映画は、60年代にアメリカ国内で暗躍した一人のギャングスターの台頭、繁栄、凋落をベトナム戦争の戦況に合わせて描いた一作でした。

主人公のフランク・ルーカスは”バンピー”亡き後のギャング組織を一手に引き受けたわけですが、バンピーという強烈な存在を失ったことで組織の統制は取れなくなる。

あるギャングはシマを主張してショバ代を要求し、またある者は混ぜものをしたドラッグを売りさばくなど、ハーレムの秩序は乱れてしまう。

しかし、フランク・ルーカスはある種のビジネスマンでした。

“混ぜものをしたドラッグ”には純度100%のドラッグ「ブルーマジック」で対抗し、原料もベトナムまで出向いて生産者から直に買い付けることで販売価格を大幅に下げることに成功します。

ライバルのギャングは仲介者からドラッグを仕入れており、仲介者(汚職デカ)は混ぜものをすることで”商品”をかさ増しし、さらに仲介手数料まで取るので、質が低く、価格の高いドラッグが市場に出回っていました。

“力づくでライバルを排除するのではなく、相手との競争によって客を奪っていく”という実にビジネスライクなやり方でフランクは市場を独占していく。

生前、バンピーは”生産者から直に買い付けて安価で販売する”大手チェーン店のやり方を非難していましたが、フランクはそのやり方をドラッグビジネスに持ち込んだわけです。

もう一人の主人公とも言えるリッチー・ロバーツは警察官。

映画では、この時代の警察は押収した現金をそのまま署に持ち帰ると「こいつはクリーンな警官だ」と一目置かれるのではなく、逆に「こいつは信用できない」と言われてしまうほど腐敗した存在として描かれています。

はっきり言って悪に手を染めた方がはるかに生きやすい世界なわけですが、リッチーは一貫して汚職とは距離を置く人物でした。

そんなリッチーの相棒で、ジャンキーのハビエルが「ブルーマジック」の過剰摂取で亡くなったことでリッチーはこのドラッグの存在を知ることになります。

ハビエルは”ブルーマジックも他のドラッグと同じように薄められている”と思い込み、効き目をよくするために過剰摂取したところ「ブルーマジック」は純度100%なのでそのまま逝ってしまう。

その後、“ベトナム戦争の混乱から目を背ける”ように、政府はドラッグ問題を重要課題として位置づけ、当局による締め付けを強化する。

そうした時代の流れの中で、リッチーはフランク・ルーカスを逮捕するための捜査グループを結成し、同じくクリーンな警察官と一緒に捜査を開始します。

最終的にフランクはリッチーに逮捕されるわけですが、フランク側のストーリーでは帝国の繁栄と凋落を、リッチー側のストーリーでは正義の苦悩と現実を克明に描いており、”異端”同士の攻防は非常に見応えがあります。

また、異端者としてお互いに一目置くフランクとリッチーの関係性や、クライマックスの汚職警官が一斉検挙される場面も、”ギャングもの”ながらも良い余韻が残ります。

60年代の空気感を伝わって来る

主人公を含む登場人物たちのファッションや行き交う車なども、当然ながら60年代で統一されており、目の前には手が込んだ映画の世界が広がります。

まとめ

警察とギャングの攻防を描く傑作のクライム映画でした。

ベトナム戦争とアメリカ社会の暗部を描くストーリーは見応えがあり、ストーリーを際立たせる60年代の空気感も素晴らしい出来栄えでした。

もちろん、デンゼル・ワシントンのギャング役と、ラッセル・クロウの警察官役も見事にハマっていました。