本作はドイツの新興スタジオ「Phantom 8」が開発したアクションゲーム。
【記憶】や【時間】をテーマにしたサイコロジカルなストーリーが特徴であり、『サイコブレイク』や『Quantum Break』との類似点が多い内容になっている。
Good
- UE4で描かれるグラフィック
- サイコロジカルなストーリー
- 精神世界のパート
Bad
- ワンパターンなゲームプレイ
- 最低限以下の操作性
- 一部の強制ステルスプレイ
全体的に粗粗しい
“アイデアの再利用”は成功とは言えない

© Phantom 8 Studio 2018
主人公の独白やBullet Timeなど、『Past Cure』はMax Payneや『Quantum Break』と言ったRemedy作品を意識して作られた節があり、そこに『The Evil Within(サイコブレイク)』やKane & Lynchの世界観を乗っけたような作風になっている。
この「既存のものを再利用する」こと自体は珍しいことではなく、『Dead Space』がそれで大成功を収めたのは記憶に新しいが、どうも本作は「調理方法」を間違えてしまったようだ。
というのも、安易にBullet Timeを持ち込んだことで、大半の銃撃戦が「スローモーション→ヘッドショット」の繰り返しで突破できてしまい、それが敵との駆け引きや戦略を練る楽しみを欠落させ、ゲームバランスをも乱しているからだ。
本作のBullet Timeは、”発動すると主人公を含む世界全体がスローモーションになる”Max Payneのそれとは異なり、主人公以外がスローモーションになり、なおかつゲージの回復も早く、プレイヤーがあまりにも有利だ。
これがシューティングのみならず、ステルスプレイや格闘戦の存在意義さえも無くしている。
例えば『The Last of Us』や『The Evil Within』と言った、正面突破が難しいゲームではステルスプレイや格闘戦は有効な手段なのだが、上記の通りBullet Time無双が可能なので、わざわざ手間の掛かる手段を取るメリットが皆無で、淡々と「スローモーション→ヘッドショット」のセットを繰り返すことになる。
そうなると、ステルスプレイ向けに複数用意されたルートや、監視カメラを停止させるミニゲームも活きて来ず、あまりにも勿体無い。
新興スタジオかつ、大手ほど予算や人員に恵まれていない点は考慮すべきだが、だからこそ全体のバランスを見た上での「再利用」が必要だったのではないか。
主人公の動きが固い

© Phantom 8 Studio 2018
TPSに限らず、シューティングゲームでは操作性が何よりも重要だ。
それだけに、本作の“関節が硬い人形”のような主人公の動きは大きな欠点になっている。
大半の敵が主人公よりも俊敏に動くため、この操作性で多数の敵に対処することは難しく、上記のBullet Time無双やハメ技無しで攻略するのは至難の業に近い。
おそらく、シューティング面の完成図はMax Payne的なものだったと思うが、残念ながら被弾ダメージと敵の数以外でマネできている所はなく、“重い操作で遊ぶMax Payne“という誰も得しないオマージュになっている。
ロックオンも機能不全

© Phantom 8 Studio 2018
さらに、銃撃戦の最中に始まる格闘戦もロックオンが機能していないので、ズルズルと殴り合いが長引き、ただただテンポを悪くしている。それこそMax Payneのようにワンボタンで振り払う程度でも全く問題ないはずだ。
蛇足に感じる特殊能力

© Phantom 8 Studio 2018
また、システム面やレベルデザインの面でも粗が目立つ。
例えばある超能力は、”一時的に操作が主人公から離れて”フリーカメラ状態になり、その間だけ主人公は無防備になるのだが、これが戦闘中でも発動できるので誤って発動した際は非常に面倒臭いのだ(常に指が掛かるRBで発動)。汎用性が高く、撃ち合いの邪魔をしない「透視能力」でも良かったのでは。
総評

© Phantom 8 Studio 2018
難易度Easyでストーリーだけ追いたいのではなく、アクションゲームとしても楽しみたいのなら、『Past Cure』はその期待には答えてくれない。
Remedy作品っぽい謎多きストーリーや、映画的な演出の数々は非常に高いレベルで実現できているだけに、一昔前で止まっているプレイ部分は残念だ。