原題 | Ghost of Tsushima |
対応機種 | PS4 |
プレイ/クリア時間 | 20時間~ |
👍Good
- 剣戟アクション
- HUDを排除したゲーム画面
👎Bad
- オープンワールドゲームとしては特に目新しいものはない
『ゴースト・オブ・ツシマ』は、元寇をテーマにしたオープンワールドゲームになっており、このジャンルでは珍しく、日本文化や侍にフォーカスした作品になっている。
評価
“目で見て、耳で聞く”HUDオフのゲーム世界
オープンワールドゲームをよく遊ぶ人なら、上のスクリーンショットは、フォトモードやHUDを全てオフにした時のプレイ画面だと思うかも知れないが、これは本作の標準設定でのプレイ画面になる。
ご覧の通り、画面上に目的地を示すマーカーやミニマップ、ルートを示すナビ機能などは存在しない。
オープンワールドゲームに限っても、『レッド・デッド・リデンプション2』にしても、『アサシンクリード オデッセイ』にしても、標準設定ではHUDをオンにした状態になっており、その逆を行くのは『メトロ エクソダス』くらい。
確かに、HUDオンは多くの人にとって遊びやすい。
画面上に行き先を示すマーカーがあれば向かうべき方向がひと目で分かるし、ミニマップにGPSがあれば迷子にならずに目的地までたどり着ける。
しかし、HUDオンだと、結局、プレイヤーの意識が画面上のマーカーやミニマップなどに集中するので、目の前に広がるゲーム世界を見るべき時間が、目でマーカーなどを追う時間に奪われてしまう。
加えて、ミニマップ内に目的地までのルートが表示されると、わざわざそれから逸れる必要がなくなるので、移動も、線をなぞるだけの時間になってしまう。
一応、こうしたデメリットを解消するために、オープンワールドゲームの中には画面上に表示する情報を細かくオン/オフできる設定を用意しているものもある。
ただ、多くのゲームはHUDオンを前提にして作られているので、一つでもオフにすると途端に遊びにくくなり、ゲーム世界を深く知ることが、遊びやすさとのバーターになってしまっている。
その点、本作はHUDオフを採用しながらも、HUDの役割をゲーム世界に持たせることで、画面上からゲーム的な表示を排除しつつ、遊びやすさも確保している。
具体的には、本作では行き先を示すマーカーが”風”になっており、風の向きが向かうべき方角であり、ミニマップのナビ機能も”小鳥”になっており、目的地に近づくと”小鳥”が現れて案内してくれる。
さらに、目的地がひと目で分かる特徴的な場所だったり、草木の色で強調されていたりなど、ゲーム世界にあるものを活用し、周囲の環境がプレイヤーを導いてくれる。
ゲーム世界そのものがHUDの役割を担っているので、必然的にプレイヤーの意識はゲーム世界に集まり、目で風を感じ、耳で音を聞きながら、目的地まで馬を走らせることになる。
当然、ミッションにおいても”ゲーム世界そのものをHUDとして活用する”は徹底されており、次に向かうべき場所は、立ち上る黒煙や足跡などが指し示す。
こうしたオープンワールドのあり方は、このゲームの魅力の一つであり、プレイヤーの意識をゲーム世界に集中させることで、ゲーム世界をより深く知り、高い没入感を得る手助けをしている。
手に汗握る剣戟アクション
目玉の剣戟アクションは、油断するとタコ殴りにされるという緊張感と、蒙古を一方的に斬り倒していくことの爽快感のバランスがよく、最後までメリハリがあって楽しめた。
基本的には、「攻撃」「回避」「受け流し」の3つを中心に戦っていくのだけれど、それぞれの技を正確に繰り出さないと倒されてしまうので、”冷静さを失うと倒されてしまう”という緊張感が常にある。
一方で、主人公を強化し、プレイヤー自身も腕を上げていけば蒙古をバタバタを斬り倒していけるので、敵を一方的に倒していくことの爽快感もちゃんとある。
さらに、難易度は”プレイの上達が実感できる”ものになっており、最初は数名の敵にも苦戦するが、最終的には大勢の敵を相手に大立ち回りできるようになり、ゲームを通してプレイヤー自身も成長していく。
また、後半は敵が強くなるのに合わせて、誉れ高い侍の戦い方から、どんな手を使ってでも敵を仕留める”冥人“の戦い方へとシフトしていくが、これは戦闘に変化を生むことに加えて、ストーリーの流れとも一致しており、遊びながら主人公の心情を疑似体験させる。
今作の戦闘はそれ自体のクォリティもさることながら、ストーリーときちんと絡めた形になっている点も含めて、よく出来ている。
オープンワールド系アクションゲームとして
正直、オープンワールド系アクションゲームとしては目新しいものは少ない。
本作にも広大なオープンワールドがあり、その中には拠点制圧を含む様々なコンテンツが詰め込まれており、他のオープンワールドゲームにあるものは一通り揃っているが、逆に「このゲームならではのものは何か」と思うと、すぐに思い浮かばない。
このゲームを遊んでいると『ホライゾン ゼロ・ドーン』を思い出す。
本作のオープンワールドゲームとしての特徴は、『ホライゾン ゼロ・ドーン』のように類似作の要素を拝借し、それらを後発ならではの改善によって磨き上げ、自分たちのゲームに落とし込んでいる点にあると思う。
確かに、本作はオープンワールドゲームとしては見慣れたものだけれど、短い間隔で用意されたオートセーブや、ロード時間の短縮などによって、類似作とは一線を画する快適さを実現している。
こうした実際に遊んだ時に分かる”類似作から改善された点”がそのまま他との差別化に繋がっているところは、『ホライゾン ゼロ・ドーン』とよく似ている。
よって、本作も、オープンワールドゲームとしては見慣れた作風ではあるが、これまでに発売されたオープンワールドゲームの中でも、特に洗練され、遊びやすい作品になっている。
ちなみに、他のゲームで例えると「ファークライ」に、RPG要素を薄めた『ウィッチャー3 ワイルドハント』を乗っけた感じ。
「アサシンクリード」ほどアクションとステルスは両立されていないし、フリーランを活用した高低差あるゲームプレイを推しているわけでもない。
欠点は仲間の存在

※一部ミッションでは仲間が同行し、加勢するが…
仲間が加勢してくれるのは良いが、仲間がダウンする度にわざわざ蘇生に向かわないといけない上に、そのまま放置しているとゲームオーバーになるのは正直、煩わしく感じた。
こっちはテンポよく蒙古を斬り倒しているのに、仲間がダウンするとそれを中断して救出に向かい、味方の隣で「R2」を長押しして蘇生するわけだけれど、こんな戦闘の流れを切る要素は必要だったのかと思う。
味方は無敵にするか、一定時間ダウンしたままにするかにしておいて欲しかった。
総評
本作は、プレイヤーの意識をゲーム世界に集中させるオープンワールドの在り方と、オーソドックスながらも洗練されたオープンワールドゲームを作り上げている点が長所として挙げられる作品だった。
また、剣戟アクションゲームとしても優れており、基本動作を強く意識させる戦闘は緊張感と爽快感があり、かつ、前後半で戦法が変化することで最後まで楽しめた。
総じて、完成度の高いオープンワールドゲームになっている。