「死」を知らない私が観た「素晴らしきかな、人生」【感想 評価 批評 レビュー】

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「死」を知らない私が観た「素晴らしきかな、人生」【感想 評価 批評 レビュー】

ウィル・スミス主演「素晴らしきかな、人生」

広告代理店の代表として成功してきたハワード(ウィル・スミス)だったが、愛する人を失ったのを機に仕事も私生活もままならなくなってしまう。やがて会社の業績も悪化し、社員たち(ケイト・ウィンスレット、エドワード・ノートン、マイケル・ペーニャ)も気が気ではない。そんな中、ハワードは舞台俳優たち(キーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレン)との出会いによって、少しずつ変化していき……。

引用 – シネマトゥデイ

重いテーマ、前向きな結末

「最愛の人が亡くなったら、あなたはどうなってしまう?」

実は私にはこの経験がまだない(出来れば一生経験したくないが)。というのも、父方の祖父母は私の誕生前に死去しており、母方の祖父母はともに大正生まれながらも今なお健在だからだ。また、私が生まれて以降、顔も知らない遠い親戚以外で亡くなった者はいない。

したがって、私は一度も”親しい人が逝ってしまった”ことを経験したことがない。その時点で、私はそれを経験したことがある人とは異なる視点から、この映画を見えざるを得なくなった。

率直に言って、最初は主人公(演:Will Smith)の心境を理解することが出来なかった。映画の冒頭では、現在と過去の対比を見えることで、主人公の心境の変化を描いているが、それであっても、抜け殻になるほど疲弊する主人公の心境を十分に理解する助けにはならなかった。

そこへ登場したのが、Keira Knightley演じる売れない役者たちだ。主人公の友人たちは、彼が経営している広告代理店の従業員なのだが、会社の先行きを案じて主人公から経営権を剥奪することを画策する。

その計画の一環として3人の売れない役者が雇われたのだ。主人公は、宛先を記すことなく「時間」「愛」「死」に宛てた手紙を毎日投函しており、それを知った友人たちが、3人の役者を雇い「時間」「愛」「死」を演じさ、主人公を窮地に追いやって経営権を剥奪することを目論んだ。

なんとも陰湿な作戦(あの友人たちはマジで陰湿)。しかし、主人公とこの3人の役者のやり取りが、主人公の心境を理解する助けになった。私が経験したことがない「親しい者が逝く悲しみ」「それによる悲壮感」と言ったものを理解することができ、次第に主人公と近いところで物語を見ていた。

そして不思議なことに、鑑賞後は非常に前向きな気持ちになれた。映画の題材はとにかく暗いのだが、主人公と役者3人(決して友人らではない)が織りなす物語はとても前向きな内容で、これまでに散々見てきたような「最愛の人の死」で安易に感動を煽る内容ではなく、そこから再起するための物語になっているので、鑑賞後の気分はとても良かった。

また、寓話的な世界観も物語と調和していた。この映画は俳優や脚本家の言うように「寓話」的な側面が強く、決してリアリティのある設定ではない。しかし、そうした側面を上手く利用した非現実的な設定が、見事に物語と調和していた。

例えば終盤、主人公がある人物の家を訪れて娘の名前を告げる場面や、彼の妻が娘の死の直前に会話した人物の正体などは、現実的な描写に拘らないからこそ可能だった演出だろうし、それらが物語に感動を与えていたと思う。

総評

安易に「誰かの死」で感動を煽る作品に辟易していた私にとって、こうした作風は斬新だった。

重いテーマを「寓話」的に調理し、非現実的な設定もアリとしたことで、他の映画では描けない心温まる物語を描けている作品。

一方で、心身とも衰弱している主人公に対する友人たちの仕打ちは全く擁護できないし、非常にモヤモヤするが。

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