原題 | Life is Strange: Before the Storm |
機種 | PC,PS4,Xbox One etc |
プレイ/クリア時間 | 10時間~ |
紹介
どんなゲーム?
思春期の揺れ動く心情を丹念に描いたアドベンチャーゲーム。
シリーズとしては、傑作アドベンチャーゲーム『ライフ イズ ストレンジ』の外伝作になっており、プレイヤーはマックスの親友、クロエとして”本編では語られなかった”出来事を体験する。
もちろん、外伝作なので先に『ライフ イズ ストレンジ』をプレイすることを勧める。
↑記事では今作を含む「ライフ イズ ストレンジ」シリーズを解説している。
ビフォア ザ ストームのストーリー
評価
【Pros】空白期間を埋める
今作は”クロエがクロエになるまでのお話”。
前作『ライフ イズ ストレンジ』のクロエは、派手なタトゥーと澄んだ青色の髪が強烈に印象に残る人物であり、内気なマックスをやや強引ながらもリードする活発なティーンエージャーだった。
しかし、今作のクロエは前作ファンが知っている彼女ではなく、「父が事故死」や「親友の転校」の中で揺れ動くティーンエージャーであり、今にも消えて無くなりそうな脆さを感じさせる普通の高校生だ。
- 普通の高校生のクロエ
※前作のような無鉄砲なキャラクターではない
今作ではそんな彼女が様々な出来事を通して、”私たちが知るクロエへと変化していく”過程が描かれる。
もちろん、クロエ以外にもクロエの母親、デイビッドやフランクなどのお馴染みの面々も再登場し、”いかにして本編の彼らへとなって行ったのか”という点も描かれる。
空白の2年間を埋める作品としては、シリーズファン必見のストーリーになっている。
レイチェル・アンバーの存在
もう一人の主人公とも言うべき存在。
レイチェルは姿こそ見せなかったが、前作では”失踪した謎多き”生徒として言及されており、マックスとクロエの関係性を解く上で欠かせないキャラクターだった。
その彼女が遂に今作では姿を表す。
前作での噂通り、彼女は「学園の花」として注目される存在で、同級生でありながらもクロエとは住む世界が違うと感じさせる人物だったが、一方で彼女なりの深刻な問題を抱えていた。
お互いに心に傷を負った者同士、クロエとレイチェルは親交を深めていくのだが、お互いの暗い部分を明かしながら信頼関係を築いていく過程は非常に見応えがあり、本編のイメージを崩さない脚本に感心した。
【Pros】※ネタバレ注意/そして”あの結末”へ
“結末を知っている”からこそ辛い。
前作プレイ済であれば”クロエの行き着く先を見た上でプレイする”ことになる。
『ライフ イズ ストレンジ』では、”マックスとして”クロエを数々の危険から救うべく手を尽くすものの、最終的には「クロエと町、どっちを選ぶ?」という究極の2択を迫られる。
- 町に甚大な被害を出しながらもクロエを救う
- クロエを犠牲にして町を救う
前作の3年前を描く前日譚は上記の結末が前提。
今よりも先の出来事を予見している点では、プレイヤーは前作の主人公と状況は変わらないわけだが、残念ながらクロエを助ける術がなく、”ストームに向かっていく”クロエをただ見守ることしか出来ない。
クロエも、【アルカディア・ベイ】も最後は災難に見舞われる。
何か選択する度に1歩ずつ”あの結末”に近づく現実がずっしりと重く、クロエとレイチェルのやり取りに和まされながらも、心を締め付けられる思いがする。
【Cons(欠点)】「時間操作」には敵わない
まず、前作『ライフ イズ ストレンジ』では主人公マックスに「時間操作」の能力が備わっており、それがゲームプレイとストーリーの両方で大きな役割を担い、唯一無二の魅力でもあった。
一方で、クロエに「時間操作」の能力は備わっていない。
その代わりに今作では【バックトーク】と呼ばれる新技が登場しているが、正直言って「時間操作」には敵わない。
(バックトークは「説得/反論」コマンドのようなもの)
前作は「時間操作」することで何度も展開を再選択することができ、”失敗が存在しない”アドベンチャーゲームとしてユニークだったのだが、今作にはそれがない。
ただ、これは苦肉の策とも言える
本編で言及されない、登場しない能力を前日譚限定で組み込めば話の整合性が取れなくなるので、「バックトーク」程度のミニゲームで妥協したということも十分に考えられる。
【Cons(欠点)】ストーリーは”引き”が弱い
前作『ライフ イズ ストレンジ』は、巨大なストームが地元【アルカディア・ベイ】を飲み込む”予知夢”から始まる衝撃的な展開で幕が開け、間髪入れずに親友クロエが射殺され、それを「時間操作」で救う劇的なシーンが続く。
それに比べると今回はストーリー面のインパクトが弱い。
前作のエピソード「カオス理論」に匹敵する心を揺さぶる場面はなく、結末に向けて伏線が収束していき”(自主規制)”という真実に気付かされるどんでん返しもない。
また、核心部分が省略された件も気になる。
結局、”レイチェルとの別れ”が明確に描かれていない。本編までの空白期間を描く上で「どういう経緯でレイチェルはクロエの下を離れたのか」をエピソード丸々を使ってでも描いて欲しかった。
狭い範囲での「選択」
良くも悪くも「前日譚」。
当然、どう頑張っても各キャラクターの未来は変わらない。結果的に終始”底が見える”選択の繰り返しになっており、「この選択が展開を左右するんだ」という醍醐味に欠ける。
選択=>結果が合わないことがある
今回は「選択」に対してズレた回答が返って来る印象。
日本語訳の問題かも知れないが、穏便な「選択」をしても強引に騒動に巻き込まれる場面があり、「そうじゃないんだけどなぁ」と思いながら先に進むことが多々あった。
特に今作では「時間操作」による「再選択」は出来ないので、モヤモヤした消化不良感が残ることも。
総評
正直、『ライフ イズ ストレンジ』を超える瞬間は無い。
だが、”空白期間を埋める”各エピソードはどれも一定の質が確保されており、プレイ中に流れる楽曲もシリーズのテーマに沿った”耳に残る曲”ばかりだ。
- Life Is Strange 2までの繋ぎ
- 本編の前日譚
- 「時間操作」の封印
- 別会社開発
などを考慮すれば満足できる一本に仕上がっている。
ただ、あと2つほどエピソードを追加して「レイチェルとの別れ」をきっちり描いて欲しかった。
続編>>>ライフ イズ ストレンジ 2 レビュー